選挙 政局

それでも小沢一郎は「小池の出馬と首相就任」を諦めてはいない

【ドキュメント】小池政局の深層
中野 弘毅
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ターゲットは、言うまでもなく…

小沢が「自民党を単独過半数割れに追い込めば、後はどうにでもなる」と嘯いたのは、要するにこういうことだ。党内で衆目の一致する「安倍後継」が不在の中で安倍が退陣を表明すれば、その混乱に乗じて、自分が自民党に手を突っ込んで一部議員を引っ張り出すことも難なくできる――。

小沢による自民党分断工作の第一の標的は、言うまでもなく石破茂とそのシンパの議員たちである。

石破も、また石破の側近である鴨下一郎(水月会《=石破派》会長代理)も、かつては小沢が党首を務めた新進党に所属していた。そこには当時、小池もいた。石破らに対し、「小池総理の下なら、石破は副総理になれる。小池も若くないし、数年以内には石破総理だ」と囁いて、おびき寄せる戦略を小沢は描いている。

 

「希望の党」は、10月5日までに202人もの公認候補を発表したが、石破や鴨下の選挙区には候補者を擁立していない。すでに小沢や小池が石破サイドに「こっちの蜜は甘いぞ」と囁いている可能性もある。

石破にとっても、自民党で首相になる目が無ければ、この誘いに乗る意味は十二分にある。思えば石破は、細川政権時に当時野党の自民党を離党し、小沢が牽引する与党側に馳せ参じた「前歴」がある男だ。

優柔不断な前原を焚き付けて、民進党を「希望の党」との合流に踏み切らせ、小池に「一気に首相へ」との夢を抱かせる――完璧とも言えるほど順調だった小沢の戦略。しかし、今回の政局はまさしく「一寸先は闇」。ここに来て、小沢の目算も狂いつつある。

最初の誤算は、小池が9月29日の都庁での記者会見で「(民進党のリベラル派を)排除いたします」と発言したことだった。この「排除発言」に、民進党内の多くの議員が反発、せっかく小沢が味方に付けた連合会長・神津季里生も激怒した。その結果、枝野幸男らが新たに立憲民主党を結党し、小沢の狙った民進党と「希望の党」の完全一本化は頓挫した。

小沢は周辺に「小池も、高揚し過ぎて僕の言うことを聞かなくなっているんだ」と愚痴をこぼした。

まだ可能性は消えていない

さらに、小沢から猛烈に背中を押され、衆院選出馬の方向に大きく傾いていたはずの小池の気持ちは揺らいでいる。

民進党との合流を巡る混乱のせいで、9月末から10月初めにかけての報道各社の世論調査では、希望の党への支持は伸び悩み、比例投票先では10%台後半に留まっている。小池自身の身の振り方についても、読売新聞の調査で「都知事に専念すべきだ」が62%、「都知事を辞職して衆院選に立候補すべき」は12%にとどまった。その結果を「一気に首相まで駆け上がる」という道筋が不透明になったと受け止めた小池は、10月5日昼の会見で改めて出馬を強く否定した。

すでに65歳の小池にとって、残された時間は少ない。一発勝負で首相の座を掴める望みがあるのなら、都知事の座を中途で投げ打って国会に戻る価値も十分にある。しかし、ただの野党党首になるだけなら、次の衆院選までの数年間、自身の「賞味期限」を維持することはまず不可能だ。

それならば、都知事に留まって東京五輪を成功に導いたほうが、よほど世間の注目と支持を集め続けることができる。そう考えて、「次の次」のチャンスを狙う戦略に転じても無理はない。とはいえ、10日に控えた公示の直前までは、小池が一転して「打って出る」と言い出す可能性も決してゼロではあるまい。

果たして、「小池首相の下で、細川連立政権を再現する」という小沢の目論見は実現するのか、それとも儚い夢に終わるのか。小池の決断如何で、日本政界の歴史は大きく塗り替えられることになる。

                               (文中敬称略)

中野弘毅(なかの・ひろき)/某大手報道機関の政治部記者・デスクとして、1980年代から永田町取材を続けている。自民党の主要派閥、小沢一郎周辺に広く深い情報網を持つ。
 
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