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「AV女優消滅」ってどういうこと…?過激な言葉に込められた真意

AVライターが読み解く

ときにうんざりするが

「ブス」と書くか、「一度見たら忘れられない顔立ち」と書くか。
「デブ」と記すか、「肉付きのよい身体」と記すか。

同じ取材対象者を見ているのに、どうしてこうも出来上がった文章が違うのか。常にそう思わされるライターがいる。ノンフィクションライターの中村淳彦氏だ。

以前、筆者は、セックスが大好きでたまらないというひとりのAV女優を取材した。彼女はAV女優になる以前には、プロバレリーナとしての経歴を持ち、セックスもまるでスポーツのように楽しんでいたから、彼女を取材して書いた記事のタイトルは「ヤリマンスーパースター列伝」という、プロレス好きにもアピールするようなコミカルものとなった。

 

一方、中村氏の手にかかるとそれは様変わりする。同じAV女優を題材にしたはずなのに、氏の本では、「元日本代表バレリーナの淫乱DNA」「性欲の奴隷」というタイトルになっていた。

取材対象となった女優、及び女優をマネジメントする事務所としては、あまり愉快なことではない。当然、一部の女優から猛烈に嫌われることもあるし、炎上もする。読み手は、その内面をヒリヒリと逆撫でされ、胸のザワつきを覚える。「ヤリマン」と「性欲の奴隷」、どちらがいいとか悪いとか、好きとか嫌いとか、そういったことではない。その見せ方の違いに、ときにうんざりしたり、凹んだりしながら、私は書き手として敬意を払う。

そんな中村氏が上梓した新刊は、『AV女優消滅 セックス労働から逃げ出す女たち』である。

新書のタイトルとはいえ、AV女優にとって自分の職業が消える、といわれるのは不愉快だ。プライドが傷つく。平たく言うと「ムカつく」タイトルだ。しかし、それは90年代からAV業界に携わってきた氏にとっては、書くべきだった本でもある。

「AV強要問題」が自覚できない業界関係者

自らの意思に反してAV出演をさせられた、と訴える女性の存在を女性団体が発表したのが、2016年3月のこと。その3ヶ月後にプロダクションの元社長ら3人が逮捕され、労働者派遣法違反で起訴される。翌月には、キャンプ場でAVの撮影を行なったとして、女優を含める関係者が公然わいせつの疑いで書類送検され、不起訴となった。また所属事務所から様々な手段で脅され、出演強要をされたとする女優の告発が相次ぎ、AV業界は今、35年の歴史において史上最悪の逆境に立たされている。

AV女優、監督、プロダクション、メーカー、編集者、ライターなど業界関係者たちは、このときこぞって「強要なんてありえない」と反論した。

「AV出演強要」とは、その語感から、薄暗い事務所で20歳そこそこの女性が、背中一面に和彫が入った男たちに輪姦され、その様子をビデオカメラで撮影される。そこから逃げると殺されるか、かの国に売られてしまう……。程度の差はあれ、そんなシーンを思い浮かべる「集合的無意識」がAV村には存在していたはずだ。

当然ながら2017年のAV業界において、そのような「強要」は存在しない。インターネットの興隆によりアダルトメディアの需要は減少し、一般社会の不景気も重なり、需要と供給は逆転する。AV女優のアイドル活動の影響も相まってイメージが向上し、志願者も増えた。

AV女優は「なりたくてもなれない職業」になったとも言われ、撮影現場でも、事務所でも、またファンからもAV女優は、手厚くもてはやされる。自然発生的に健全化された業界では、出演強要なんてありえない。そんな風に感じる関係者も多く、報じられるニュースには反発が生まれた。

しかし女性団体が訴え、当局が問題視する「強要」は、彼らの考えるそれとは違う。