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マンション売買で損しないために、知っておきたい「業界のウラ事情」

仲介業者はこんなことを考えている
榊 淳司 プロフィール

仲介業者が「専任」をほしがるワケ

仲介業者は、売り手からの手数料だけでも確実に稼げる専任媒介契約をほしがる。その機会をつかむための手段として、無料の査定サービスを提供するのである。

ところが、「一括○社査定」のようなサイトを通した場合、あるいは売り手が自らたくさんの仲介業者に依頼した場合、査定が競合状態になることも多い。そうなると、せっかく無料で査定を出しても、自社に専任契約が転がりこんでくる可能性は低くなる。

さて、そんなときに仲介業者はどう動くのだろうか。

あまり大声では言えないことだが、悪質な業者は「とてもそんな額では売れっこない」レベルの高額査定を出してくる。そして、売り手には「当社は営業力があるので、この価格で売ってみせる自信があります」などと、胸を張って言うのである。「そんな価格で売れてほしい」という売り手の欲目につけこんで、無理にでも専任契約を取ってしまうのだ。

仮に、その高値査定を信じて、その仲介業者と専任契約を交わしたらどうなるのか。

当然、売れない。業者は「最近は市場が急激に弱くなっていまして」といった言い訳をしてくることだろう。何カ月か経って、「では○○万円に下げませんか」と、市場価格並みの提案をしてくるなら、まだその業者は良心的だ。

悪質な業者だと、市場価格から2割ほど安い価格を示して、「この額ならすぐに買い取る業者がいます」という提案をしてくることもある。最初の査定額から3割以上減額、ということもざらにある。

売り手が焦って「その額でもいいや」と売却に応じてくれれば、専任契約を取った業者にとっては大成功だ。まず、売り手と買い手の両方から仲介手数料が得られる。これを業界用語で「両手」という。住戸を買い取った業者は、今度は本当の市場価格で売り出す。しかも、すでに両手を得た先の仲介業者が、住戸を買い取った業者から専任を取りつけて売り出すのだ。

実は、それは二つの業者があらかじめ「握っていた」道筋である。同じ物件で2度目の専任を取った仲介業者は、今度こそ本気で買い手を探す。首尾よく見つかって売買が成立すると、また双方から手数料が入る。同じ物件で「両手」を2回。ふつうに買い手を見つける場合の約4倍の手数料を稼げる仕組みだ。

 

「不動産テック」が業界を変える

こんなウラ事情を知ってしまうと、最初に売れもしない高値査定を出した仲介業者が、ものすごい悪徳のように思えてくるかもしれない。

しかし、それは間違っている。仲介業者というものはその大小にかかわらず、ここまで述べたような取引を日常茶飯事にこなしていて、この業者だけが特別悪徳とは言えない。強い言い方になってしまうが、現実問題として、彼らのビジネスモラルは他の業界と比べるとかなり低レベルだ。

そういう業界の空気はどうしても外部に漏れ伝わるので、「不動産屋はウソつきだ」「不動産屋はすぐに人をダマす」という負のイメージがいつまでも払拭されない。

とはいえ、誠実に顧客のために動いてくれる仲介業者もいる。中古マンションを売却する場合は、そういう誠実な業者を探し出すこと、さらには、自ら相場観を養って無謀な高値査定を見抜く必要がある。「この客はダマせない」と思わせることで、仲介業者はそれなりの仕事をしてくれるはずだ。

さらに、最近では「不動産テック」と呼ばれる、不動産とテクノロジーを融合した新たなサービスの進化が著しい。売買取引などの客観的かつ大量のデータや、人工知能(AI)のような最新のテクノロジーを活用し、物件の住戸ごとの推定価格を即座に無料でオンライン提供するなど、画期的なサービスが出てきている。

最新のサービスをうまく活用することで、売りたい住戸の評価についてあらかじめ「情報武装」できる。それは、仲介業者に「おいそれとはダマされない」知識を備えることにつながる。不動産テックの進化は、中古マンション市場の風景を徐々に変えていくかもしれない。

蓄積された不動産取引に関する膨大なデータと人工知能(AI)を活用し、部屋ごとの価格を高い精度で試算できるサービス「家いくら?」がスタートした。ぜひご活用いただきたい。(現代ビジネス編集部)

人口減少と高齢化を背景に、国のあり方が大きく変わろうとしています。定年までの安定雇用で住宅ローンを返済し、静かな老後生活へ、という人生は、とっくに過去のものとなりました。家を買うのか借りるのか、どこで、どんなふうに暮らすのが幸せなのか。

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