Photo by iStock
企業・経営 学校・教育 行政・自治体

「人手不足」と「資格」で学生を集める、私大ビジネスのカラクリ

加計学園騒動を今あえて考える(2)

作家・楡周平さんが、解散総選挙の喧騒でかき消されつつある「加計学園問題」に独自の視点から斬り込む本連載。第一回に続いて、獣医師業界の現状を分析したうえで、「なぜ加計学園は獣医学部にこだわるのか」の謎を解き明かします。

獣医師を増やす必要はないのに…

獣医学部を新設する必要性の根拠の一つに、産業獣医師が絶対的に不足していることが挙げられている。

確かに、現状を見ればその通りではある。しかし産業獣医師の不足は、今後も続くのだろうか。私はそうは思わない。

なぜなら、今後人口が減少していくに従って、ペットの数も減っていくに決まっているからだ。市場が縮小していく一方で、獣医師の数が増加するとなれば、開業しても十分な収入を得るのは容易ではない。その時、学生たちの目はどこに向くだろう。

獣医師の資格を取得しても、一般企業に就職する学生は現在でも少なからずいるそうだが、仮に大企業に職を得たとしても、安定した生活を意味しない時代である。最近では、高校生が就きたい仕事、男子第4位、女子第1位が公務員だ。絶対に潰れない。まずリストラに遭うこともない。公務員が多い産業獣医師は魅力的な職業に見えてくるのではないだろうか。

しかし、ここでもいずれ需要と供給のバランスの問題に直面することになる。なぜなら、公務員の定年が六十五歳に延びた今、新卒で産業獣医師に採用されれば、勤務期間は四十年以上。定年がさらに延びる可能性もあるのだから、現在は不足している産業獣医師不足も解消され、獣医師資格を取得しても空きがない。気がつけば、僅かな採用枠を巡って激烈な競争を強いられる時代になっていたということだって考えられるのだ。

 

開業しても生計を立てるのは難しい。産業獣医師にも空きがない。研究者の道があるにせよ、こちらは少数精鋭。はるかに狭き門だ。

その時、獣医師を目指そうという学生が、果たしてどれだけいるだろうか。まして、すでに教育界には少子化の波が押し寄せ、学生の確保に四苦八苦しているのが現状である。少子化は今後ますます進行し、上昇に転ずることはあり得ない。

これは、学校経営の見地からすれば、極めて深刻な事態のはずである。少なくとも今のニーズを満たすべく、大学を新設してまで有資格者を増員するのは、長期的展望に欠けるというか、無謀とも思えるのだが、ではなぜ、加計学園は獣医学部の新設に乗り出したのか。

加計学園が「資格」を重視する理由

その狙いを考える上で、加計学園が経営する千葉科学大学は実に興味深い。

千葉科学大学は、現理事長の加計孝太郎氏が先代から経営を継いだのち、自身の手で開学した初の教育機関で、薬学、看護、危機管理の三つの学部で構成される。

この三つの学部には共通点がいくつかある。

第一は、卒業後大学で学んだ知識を生かした職業に就こうとすれば、資格の取得が必須、別途試験に合格しなければならないということだ。

薬剤師、看護師には国家試験があることは言うまでもないが、危機管理という聞きなれない学部も実はまた同じである。

この学部には、システム、環境、医療、航空技術、動物の学科があり、さらにコースの中には、消防官・地域防災、警察官・犯罪科学、自衛官・安全保障、航空整備にパイロット養成と、何を目的とするのか、首を傾げたくなるような文言が並ぶ。