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企業・経営

EVで「新会社設立」トヨタになくて、マツダにあるもの

初心に返る「志」はあるか

マツダの誇る「MBD」とは何か

トヨタ自動車とマツダ、デンソーの3社が9月28日、電気自動車(EV)開発の新会社を設立すると発表した。現場の開発リーダーには、マツダで研究開発を統括する藤原清志専務が就く。ここがミソだ。

読者は意外に思うのではないだろうか。一般的には、資金力豊富なトヨタが、マツダに環境技術を提供して、いずれ呑み込んでいくと思われがちだが、それは全く違う。

今回のEVの共同開発ではマツダが主導権を握る。筆者がニュースリリースを読む限り、マツダが得意とする「モデルベース開発(MBD)」や「コモンアーキテクチャー」を活用することが大々的に示され、行間からは「マツダさん全部お願いします」といったニュアンスさえ伝わっていた。

 

EV開発でも、筆者が前回のコラムで紹介したバーチャルシミュレーションを用いた「MBD」は欠かせない。マツダは日本のカーメーカーの中では、MBDを最も得意としており、トヨタはそれを苦手としている。

マツダのMBDについて、同社の屋台骨を支える「スカイアクティブエンジン」のケースを例に説明すると、こうなる。やや専門的になるが、ご勘弁いただきたい。

マツダのMBDでは、スーパーコンピューターなどを駆使したバーチャル設計から理想の燃焼モデル(数式で示すことができるもの)を割り出し、そのモデルが実現できるようにエンジンを開発した。要は理論値と実験データをかい離させずに理想のエンジンを実現させるために工夫したのだ。通常は、実物で試作を繰り返して燃焼モデルを作り出していくが、これとは逆のパターンに取り組んだ。

これにより、エンジン制御システムの開発期間が大幅に短縮できた。MBDを本格化させる前のマツダの開発は、1番目のプロセスで制御システムを設計し、2番目のプロセスでデンソーなどに制御コンピューター(ECU)の試作を依頼、これに3ヵ月程度かかった。そして3番目のプロセスでECUを試作エンジンにつないで動かしてみて、ここで仕様ミスやソフトウェアのバグが分かり、その修正にさらに数ヵ月必要なケースもあった。このプロセスを経てエンジンの仕様がやっと固まった。

それがMBDによって開発プロセスは一新された。旧方式の1・2番目のプロセスでは、「Rapid-ECU」と呼ばれる内製コンピューターを用いることで、これまで3カ月かかっていたECUの開発がわずか1日でできるようになった。要は1日でプログラム化してエンジンに接続して実験することで、ECUを電装品メーカーに試作してもらわなくてもよくなったのだ。

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次にバーチャル・シミュレーション技術を活用して、まだ実物のエンジンがない段階でドライバーモデル、路面モデルなどを考慮したバーチャルの実験をしてエネルギーの最適化も行なった。この段階で燃費1リットル当たり30キロを実現させることができたという。

また、スカイアクティブの頃までは、エンジン、サスペンション、変速機など単体の領域でのMBDが中心だったが、EVからは車全体をMBDで開発すべくマツダは着々と準備してきた。