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サントリーが競争激しい飲料水業界でヒットを飛ばし続けられる理由

サントリー食品インターナショナル社長に聞く

サントリーグループの清涼飲料事業を担う、サントリー食品インターナショナルを取材した。国内市場では「伊右衛門」「特茶」「オランジーナ」などがヒット。海外でもアジア、オセアニア、欧州、米州など50を越える国・地域に商品を展開し、売り上げは1兆4000億円を突破。'13年の上場以来、4期連続で増収増益を達成している。社長は現場生え抜きで、長くマーケティング畑を歩んで来た小郷三朗氏(63歳)だ。

サントリー食品インターナショナルの小郷三朗社長

「やらなわからしまへんで」

【ボス】

サントリーグループの創業者・鳥井信治郎は、未知の分野に挑戦する折、周囲から反対の声が上がっても「やってみなはれ。やらなわからしまへんで」と諦めることはありませんでした。

当社の清涼飲料事業も、緑茶の「伊右衛門」やコーヒーの「BOSS」などのヒット商品が誕生するまでには、無数の失敗を経験しています。お客様が本当に何を望んでいるのかを知るためには、失敗と挑戦を繰り返すほかありません。すなわち、一つ失敗するたびに、「お客様の真実」に一歩ずつ近づいていくのです。

 

私にとって「やってみなはれ」という言葉は、「失敗し、失敗から学ぶことを繰り返し、成功するまでへこたれずに続ける」という意味だと思います。

【パイオニア】

成功するための数少ない秘訣の一つは、カテゴリのパイオニアになることです。例えば「オランジーナ」。パルプが含まれていて大人っぽい苦みがあり“大人のための果汁炭酸飲料”という新たなカテゴリを創造しました。

また、トクホのお茶「特茶」は内容量も500mlあり、「どうせ飲むなら脂肪が減る方がいいでしょ」といった感覚で“いつものお茶に置き換えて飲めるトクホ”という新カテゴリをつくっています。

【多情多恨】

好きな言葉は、サントリーの前身である寿屋宣伝部出身の芥川賞作家、開高健さんの「森羅万象に多情多恨たれ」です。「悔恨も含め、様々なことに心を動かされよう」という人生訓と捉えられますが、この言葉はビジネスにも活きると思っています。

優れた発想は、ふとしたきっかけや一瞬の閃きから生まれることがあります。森羅万象に目を見開き、なぜそうなったのかを考え、記憶しておけば、何か決断を迫られたとき、「昔、あの場面でこうしたから今度は……」と的確な次の一手を打てるのです。

「いかに心に残るか」を実践する

【関西魂】

大阪出身で、「お笑い」「お好み焼き」「阪神タイガース」の関西三点セットが好きです。なかでも笑いは仕事においても有用で、海外の従業員とコミュニケーションする時は、彼らをどう笑かすかばかり考えています。長く宣伝部長をつとめると、人に何かを伝えることがいかに大切で、難しいかがわかります。

伝えるコツは、「いかに心に残るか」を考えること。そのためには“つかみ”が重要で、これは笑いをとることと似ている部分があります。また内容を伝えるためには「わかりやすく、徹底的に」かつ「ストーリーをいかに組み立てるか」が大切。ここまで考え、1時間話して、1つか2つ、言いたいことが伝われば大成功です。

【現場に光を】

全国にコンビニエンスストアは約5万5000店あります。一方、飲料自販機は240万台強あり、販売チャネルの中で、桁違いにお客様との接点になっていると言えます。なかでも当社は'15年にJTさんの傘下にあったジャパンビバレッジホールディングスを買収し、缶・ペットボトル機で55万台を持っています。

当社が市場を上回る成長を続けてきた理由は、この自販機の競争力を高めるため、魅力あるブランドを揃えてきたから。各カテゴリでナンバー2までに入れるブランドをいかに多く持てるかが勝負と考え、缶コーヒーでは「BOSS」、水は「サントリー天然水」、緑茶は「伊右衛門」とストロングブランドを育成してきました。

ちなみに当社はマーケティングや宣伝が上手と言われますが、これはあくまで外部から見える部分の話。現在、当社は年間4億3000万ケース、1日平均100万ケース以上の飲料を国内で販売しています。

毎日、安全・安心第一の商品を製造し、日本列島の隅々までお届けするスタッフがいて、初めて我々のビジネスは成り立っているのです。社長としては、ここにも光をあてていきたいと思っています。

【失敗と挑戦】

当社は今、グローバルかつユニークで存在感のあるプレーヤーを目指しています。世界保健機関(WHO)が1日あたりの砂糖摂取量を従来より厳しくしたガイドラインを発表したように、今、世界的に避糖化の流れが始まっています。

これまで当社は健康志向が進む日本市場で、他社に先駆けて無糖・微糖の商品を開発する技術を磨いてきました。昨年は日本で培ったお茶のノウハウを活かし、フランスで現地の嗜好に合わせた紅茶飲料「MAY TEA」を発売しました。

激しく変化する世界の飲料市場の中でも、失敗と挑戦をしっかりと繰り返していけば、当社は飲料を通して世界をもっと健康にできる、と信じています。

(取材・文/夏目幸明)

こごう・さぶろう/'54年大阪府生まれ。'77年に京都大学法学部を卒業し、サントリー(現・サントリーホールディングス)入社。洋酒事業部長、宣伝事業部長等を経て、'11年にサントリー食品インターナショナル専務取締役に就任。'12年に副社長、'16年に代表取締役社長に就任し、以来現職

『週刊現代』2017年10月7日号より