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医療・健康・食 ライフ 週刊現代

「菌付きトング」でO157感染、死者も… あなたは大丈夫?

サラダバーやバイキング…危険は身近に

バイキングや惣菜店で普段、何気なく使っている「トング」。だが9月に死者まで出した感染事件では、この身近な道具が菌を媒介したと見られている。思わぬ経路で感染する細菌から身を守るには?

誰が触ったかわからない

「はっきり言って食品を売るような環境ではありませんでした。調理の段階で食材を二次加工、三次加工するのは当たり前。

例えば、中華料理で売れ残ったものを水洗いして、次の日に中華スープの具材にして販売していました。余った煮物も洗ってフードプロセッサーにかけ、細かくして白米に混ぜる。そうすると、五目ご飯にしてパック売りできるのです。

賞味期限という意味では問題ありませんでしたが、お客さんをだましているようで、気持ちよく仕事ができる店ではありませんでしたね」

 

こう語るのはフレッシュコーポレーションがチェーン展開する「でりしゃす」系列店で働いていた元従業員の男性だ。

このような杜撰な管理体制ゆえか、8月に埼玉県と群馬県にある「でりしゃす」の店舗で販売された惣菜を食べた22人が相次いで病原性大腸菌O157に感染。9月上旬には8月11日に惣菜を食べた3歳の女の子が死亡した。

問題発覚当初は、被害者たちが共通して購入していたポテトサラダが原因だと見られていた。

しかし、死亡した女の子がこのポテトサラダを食べていなかったこと、市の立ち入り調査の結果、サラダの製造工場から菌が検出されなかったことから新たに感染源として疑われたのが、客が食品を取り分けるトングだ。

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市の担当者によるとトングの使い回しなどにより「調理後に店内で販売する段階で、別の惣菜や客から菌が付着し、二次感染が起きた可能性がある」という。

感染者の一人は「買おうとしたサラダの皿にトングがなかったので、別のサラダ用のトングを使った」と証言している。

実際の店舗での管理体制はどうなっていたのか。前出の元従業員の男性が語る。

「トングに関しては汁物に完全に浸ってしまっていたり、手元が汚れていたりしたら交換していましたが、数時間おきに定期的に入れ替えるということは行われていませんでした。

正直、スタッフの数も少なかったので、ゆっくり掃除をする時間がとれず、食品を管理する冷蔵庫の中や、調理場も清潔ではなかった」

レジ担当もおらず、調理場の人間がそのままレジを打っていた。調理場から客の状況が見えるので、客が売り場に来たらレジに行って、客が帰ったら調理に戻るという具合だった。

前橋市には調理担当者が手袋をつけたままレジ打ちをしていたという苦情も寄せられている。

「基本的に料理の交換はなく、朝11時くらいに出したものを夜8時まで蓋のない状態で出していました。料理は1時間ほど放置すると表面が乾いて、見た目も悪くなるので定期的にトングを使って混ぜ返してごまかしていました」(元従業員)

気軽に立ち寄れるという雰囲気が逆にあだになったともいえる。

「お客様のなかには、揚げ物を直接手で取ったり、黒い埃まみれの作業着のまま入ってきたりする人もいました」(同前)

不特定多数の人が、自由に食べ物を扱えるという状況が危険だった。トイレで手を洗わない客がトングに触る可能性もあったわけだ。