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戦争 日本史

考古学が解き明かす「人類史上、戦争はいつどのように始まったのか」

いまこそ問いたい、知りたい

戦争は人類の本性によるものではない

私たち人類社会の「宿痾」ともいえる戦争。

戦争は、人類史上いつどのようにして始まったのだろうか。それが文字の出現よりもずっと昔にさかのぼる以上、戦争開始のプロセスとメカニズムを突き止める仕事は、考古学にしかできない。

この仕事に初めて取り組んだ日本の考古学者は、佐原真(元・国立歴史民俗博物館館長、1932〜2002)だ。佐原は、対人用武器や防御施設などの「戦争の考古学的証拠」が、狩猟と採集の時代にはなく、農耕の時代になってから現れると述べた。

このことから、戦争は人類の本性によるものではなく、農耕や、そこからくる富というものをもつようになってから後天的に生み出したものだと主張したのである。

だからこそ戦争は止められる。そのように佐原は、現代社会に向けてのメッセージを発した。

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日本の場合、本格的な農耕は弥生時代に始まる。始まるや否や、佐原のいう「戦争の考古学的証拠」は早くも現れる。

福岡県糸島市の新町遺跡では、鋭利な磨製石鏃(石を磨いて作った矢じり)が大腿骨に深々と突き刺さった熟年男性の人骨が見つかっている。日本最古の戦争犠牲者といえるだろうか。

 

九州から東の各地へと農耕が伝わり、それに根ざした古墳時代の王権が作られていく過程で、戦争は無数の考古学的証拠を残した。

武器の充実、防御施設の発達、戦士や武人を葬った墓の増加など、古代国家への道筋には戦争が濃い影を落としている。国の始まりは、戦争の始まりでもあるのだ。