企業・経営

いま一番稼げるのは「データ・サイエンティスト」かもしれない

新卒でも「破格の待遇」
伊藤 公一朗 プロフィール

「データ・サイエンティスト」の仕事

データ・サイエンティストとは「データを解析するための統計学的知識を持ち合わせている人」という狭義の定義として考えられがちだが、これは正確な記述ではない。

実は、ビジネスや政策の設計に有用となるデータ分析をするには、「人間や企業の行動モデル」を構築できる思考法も必要になる。

例えば、人はどのような欲求を持って購買行動をしているのか、企業はどのような目的や目標を持って販売活動をし、他の企業とどんな競争をしているのか、ということである。

こういった思考法なしに分析を行うと、膨大なデータに対しての「切り口」を持つことができず、有用な分析結果を導けないのである。

「人間や企業の行動」を科学として分析してきたのは、心理学、脳科学、そして、ゲーム理論や行動経済学を始めとする経済学や経営学であった。

そのため昨今、米国の学部教育やビジネススクール・公共政策大学院などの大学院教育では、行動科学とデータ分析を結びつけられる人材の育成に力を入れたカリキュラム構築が行われている。

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新卒採用でも売れまくる

米国の大学や大学院がこのような改革を行っている最大の理由は時代の要請である。冒頭で大学教授レベルのデータ・サイエンティスト争奪戦が始まっていることを書いたが、これは新卒採用でも同様である。著者がこの数カ月で体験した実例を2つ紹介しよう。

シカゴ大学では教授陣の研究を手伝ってくれる研究補助員を多く募集している。特に最近増えてきているのが、学部卒後、大学院進学や民間就職をする前に2年ほどのフルタイム研究補助員として働くポジションである。

今年度は私も採用面接を行い、全米から応募してきた学部4年生を面接した。驚いたのは、シカゴ大学の競争相手(つまり応募してきている学生を採用しようとしている相手)は他大学ではなく、モルガン・スタンレー、ゴールドマンサックス、アマゾン、グーグルといった民間企業であった点だ。

データ・サイエンティストとして優秀な学部卒業生は、我々も研究補助員として採用したいが、こういった民間企業も利益追求のために欲しい人材だということだ。

 

事実、私が採用を通知した3人の学生のうち2人は民間企業への道を選択した(もちろん、給料はあちらが倍近いので仕方ないのではあるが)。

2点目の例は大学院卒業生の就職市場である。米国の経済学博士号取得者の新卒市場は、経済学者版リクナビとも言える「米国経済学会の就活ウェブサイト( https://www.aeaweb.org/joe/listings )」で中央集権的に行われる。

ウェブサイトを訪れていただくとわかるのだが、この就職市場に参加しているのは大学だけではない。

アマゾンなどの民間企業、及び連邦や州の政府機関も多い。つまり、経済学博士号取得者を欲しているのは大学だけではないのである。事実、大学の研究職のオファーを断り、民間企業へ就職する博士号取得者は増加傾向にある。