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週刊現代

ラサール石井さん「読書とは、頂上の見えない登山のようなもの」

読みたい本がどんどん増えていく

西遊記は「元祖RPG」

実家にある本は何でも読み尽くして、幼稚園の頃から『主婦と生活』なんかも読んでいました(笑)。覚えたての漢字を読むたびに周りの大人が「すごーい!」と褒めるものだから嬉しくて。それ以来、本を読むのが好きになりましたね。

1位の『西遊記』は小学校3、4年生の頃に友達の家にあった全集で読みました。子供向けのシリーズではなくて、大人が読む分厚い『西遊記』だったので少し難しかったんですが、毎日通ってひたすら読み続けましたよ。

孫悟空たちが様々な苦難を一つ一つクリアして、ゴールの天竺へ行くという、今のロールプレイングゲームの元祖ですね。中でも金角と銀角という妖怪が孫悟空にやられて、ひょうたんの中に吸い込まれて溶かされてしまうところや、芭蕉扇といって火を鎮める団扇をもつ仙女との戦いに胸を躍らせていました。

 

最初は悟空を始め、猪八戒も沙悟浄も悪い奴でね。でも、彼らを仲間にして敵をやっつけていくというのが当時の僕には新鮮でした。これはもうアメコミ映画の『スーサイド・スクワッド』そのもの。

そして、三蔵法師と共に旅するうちに、彼らの間に友情や正義感が芽生えていくのは今大人気の漫画『ワンピース』と似ていて、そういう意味ではエンターテインメントものの原点だと思う。

5歳上の兄貴が漫画雑誌を買っていたので、3歳ぐらいから、『マガジン』や『サンデー』などの少年漫画雑誌を読み始めました。中でも手塚治虫先生は僕にとって神様みたいな人で、2位は手塚先生のSF作品『0マン』です。

先生は動物をメタモルフォーゼさせるのが好きで、この作品も0マンと言われるリスに似た超人類と人間の抗争を軸に物語が展開します。日本兵に拾われ、育てられた0マンのリッキー少年が人間と折り合っていくなかでの苦悩が描かれる、読み応えのある作品です。

自分で書いてみて分かったこと

僕は学生時代から井上ひさしさんのファンでしたから、3位に挙げた戯曲『藪原検校』が渋谷の西武劇場で上演されたときも観劇しました。それまでの井上作品のハチャメチャな喜劇路線から一転して、非常に暗く、シリアスな芝居だったから衝撃を受けましたね。

座頭、いわゆる盲人の話なんです。生まれながらに目が見えない杉の市は晴眼者を見返すためには金を手に入れるしかないと考え、貸金の取り立てで頭角を現します。

学者の塙保己一からは、知性と品性を磨くことこそ晴眼者と対等の場に立つための唯一の道と説かれますが、悪行の限りを尽くし成り上がっていきます。杉の市は悲劇的な最期を遂げるのですが、井上さんが描く、差別されている人間のエネルギーに圧倒されました。今回舞台で初めて『円生と志ん生』という井上作品に出演させて頂き、光栄です。

最近は演出や脚本の仕事も多いのですが、いつも苦しんでいます。締め切りが迫っているのに筆が進まない時なんて、もう最悪。そんな時にニール・サイモンの自伝『書いては書き直し』を読み返すと、彼ほど才能がある劇作家でもこんなに苦労してきたんだ、食えない時代があったんだと思い、もっと頑張らないと、とヤル気が湧いて来るんです。

当時は今ほど脚本家の地位は高くなかったからヒドい目にも遭っているんだけど、奥さんへの愛情の深さや、夫婦で互いに励まし合っている姿に胸を打たれます。