ファッション編集者軍地彩弓氏/メルカリ社長・小泉文明氏
エンタメ ライフ

アパレルメーカーがヒット商品を生めなくなった、ひとつの原因

メルカリ社長×軍地彩弓【前編】

ここ数年で一気に認知度を拡大したフリマアプリ「メルカリ」。アパレル業界や百貨店が不振にあえぐいま、反比例するようにメルカリの需要や利益は拡大している。どうして同サイトは急成長を続けるのか。

アパレル不振の現状とその理由、そして消費者の価値観の変化について、株式会社メルカリ社長の小泉文明氏と、ファッション誌編集者の軍地彩弓氏が対談。今回公開する前編では、「変化していく消費者」について話が及んだ。

批判より先に考えるべきこと

軍地彩弓(以下、軍地) メルカリで興味深いのは、夏休みの宿題を買う親の話やトイレットペーパーの芯が出品されているという話です。特に、みんなが捨てているものに価値が付くという現象はメルカリならではですよね。

こうした話題に対して、プラットフォームであるメルカリに批判がいきがちですが、メディアは、宿題のあり方や、普段だったら捨てているものに価値が付いているという事象についても、もっと言及すべきだと私は感じています。

新しい仕組みへの抵抗は普遍的にあるものかと思っていますが、大切なことはメルカリが社会問題になるぐらい人々の価値観を変えたこと。

小泉さんは、メルカリによる社会の変化をどのように受け取られていますか?

 

小泉文明(以下、小泉) 「インターネット=個人のエンパワーメント」だと私はよく言っていて、個人が強くなってきたことが社会変化に繋がっていると感じています。

インターネット以前の資本主義社会では、大量生産、大量消費で、同じものをみんなで持つことが効率的な成長につながり、良いとされていた時代でした。しかし、人間には個性があるので、インターネットの力を手にすることによって、選べることを重視する時代へと変化してきています。

メルカリの前に経営していたミクシィでいえば、個人が力も持つようになって、マスメディアのものであった書く力や情報発信力を個人が得たわけです。

メルカリにおいても、売る人と買う人が縦の関係から、誰でも売買できる横のフラットな関係へと変化しているのだと感じます。

◇小泉文明(こいずみ・ふみあき)1980年生まれ。早稲田大学商学部卒業後、大和証券SMBCにてミクシィやDeNAなどのネット企業のIPOを担当。2007年よりミクシィにて取締役執行役員CFOとしてコーポレート部門全体を統轄。2012年に退任後、複数のスタートアップを支援し、2013年12月メルカリに参画。2014年3月取締役就任、2017年4月に取締役社長兼COO就任した。

軍地 ここ1〜2年の変化としては、若い子の間で、メルカリで売ることを前提とした物の買い方が始まってきたこと。この変化により、20代がハイブランドを買うようになりました。

今まで若い女の子に人気だったファストファッションは、確かに安いのですが、リセールしづらい。一方、ハイブランドのものはそこまで値落ちせず、逆に限定品などであれば値段が上がって売れることもあります。結果、買ったら価値がゼロになってしまう物より、リセールして戻ってくる価値のある物の方に着目するようになってきました。

小泉 おっしゃる通りですね。定価5〜10万ほどの商品がよく出品されています。

軍地 女の子たちはお金の使い方が変わり、リセールできるかどうか、つまり物の本来の価値を見定めるようになってきましたね。これは、消費者が知恵と賢さに加えて、「道具」も持つ時代になったと私は思っています。

今まではリセールだったら、質屋のような店舗に持ち寄っていたわけですが、メルカリという道具を使えば質屋より高く売れる時代になったんです。買いたい人と売りたい人がきちんと繋がって、価値の再変革が起きている。

Photo by Shutterstock

軍地 一方で、ただ原点に戻っているだけという見方もできます。貨幣本位ではなく、価値本位主義への変化をメルカリがもたらしているように私は感じています。

小泉 価格の決定権が人々に戻ってきたことが大きいと思っています。物々交換していた時代と同じですね。資本主義の時代では、3000円のものを3000円で受け入れて買うしかなく、拒否権がありませんでした。

しかし今は、二次流通の隆盛によって、価格を個人で決められるようになりました。資本主義的な流通もなくなりはしませんが、二次流通本位の購買と並存していくように思っています。