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原子力規制委員会が東電に「背徳のお墨付き」を与えたウラ事情

柏崎刈羽原発「適格」に異議アリ!

「所管外」の判断に踏み込んだ

柏崎刈羽原子力発電所(6・7号機)の再稼働へ向けて、東京電力が最大のハードルの一つをクリアした。

決め手になったのは、原子力規制委員会が開いた定期会合(9月20日)で、小早川智明・東電社長が同委員会の求めに応じ、安全文化を向上させる方針を「保安規程」に明記すると表明したことだ。

東京電力の小早川智昭社長東京電力の小早川智昭社長 photo by gettyimages

保安規程は、電力会社が作成して規制委が認可するもので、電力会社に遵守義務が発生する。規制委は小早川発言を評価して、東電を原子力事業者として適格とみなし、今週半ばにも事実上の運転再開の“お墨付き”となる審査書案をまとめるという。

規制委がお墨付きを与えると、再稼働に向けて残る大きなハードルは、原発の地元である新潟県の同意だけとなる。ただし、新潟県の米山隆一知事はかねて、「同意の判断には福島第1原発事故の検証が欠かせない。少なくとも3~4年かかる」との立場をとっており、ただちに再稼働が実現するわけではない。

一般の電力会社と違い、チェルノブイリ原発事故と並ぶ過去最悪の原子力事故を起こした東電に、原子力事業を継続する資格があるか否かは、いまなお世論の分かれるところだ。そうしたなかで、規制委がこれまで所管外としてきた東電の適格性の判断に踏み込み、お墨付きを与えたことは、今後の展開に大きな影響をおよぼすことだろう。

それにしても、任期満了をわずか2日後に控えた田中俊一・前原子力規制委員会委員長は、なぜ退任直前になって、東電の適格性審査に踏み込んでお墨付きを与えたのだろうか。さまざまな憶測が飛び交う背景を大胆に推論してみたい。

 

絶対的な安全を保証するものではない

原子力規制委員会は、福島第1原発事故をきっかけに、業界とのなれ合いを批判された原子力行政を是正するため、環境省の外局として2012年9月に発足した。

設置目的として、国民の生命・健康・財産の保護、環境の保全、そしてわが国の安全保障の確保が明記されている。委員長と4人の委員は中立公正な立場で独立して職権を行使し、原子力事故などを予防する使命を担っている。

同委員会は2013年7月、原発再稼働審査の事実上の尺度となる「新規制基準」を制定。これまで九州電力・玄海原発、四国電力・伊方原発、関西電力・高浜原発など、西日本各地の加圧水型原子炉(PWR)の再稼働を容認してきた。

ただ、規制委員会はこれまで、再稼働容認の拠りどころとしてきた新規制基準を、建築基準法のような強度に関する指針と位置付け、これを満たしたからと言って絶対的な安全を保証するものではないし、電力各社が原子力事業者として原発を運転する資質(適格性)があると判断したわけでもないと説明してきた。田中前委員長も、一貫して「(新規制基準に合格しても)安全とは私は言わない」とくり返してきた。

そのように現実を真摯に説明する規制委員会の姿勢は、原子力エネルギーそのものへの信頼回復に欠かせないとみられていた。加えて、原子力に関する問題を規制委員会がすべて背負い込むスタンスを取らないことは、電力各社が自ら地元の同意を得る必要があることの、裏付けの一つになっていた。

また、そうした規制委員会の存在は、煮え切らない歴代政権に対して、エネルギー政策における原子力の位置づけを明確化するよう、あるいは、万が一の事故に備えて周辺住民の避難対策を整備する責務を果たすよう、促す役割も果たしていた。