カラオケ店が軒を連ねるバンコクの歓楽街、タニヤ通り(著者撮影)

「月給9万円」タイのコールセンターで働く30代日本人女性の憂鬱

男娼との子を授かり…

大手企業の中には、クレーム対応などをアジアにある日系企業に丸投げしているという話を聞いたことはあるだろうか。そこで働いているのは、どんな人たちなのか。アジアを中心に取材を続けるノンフィクションライターの水谷竹秀氏は、タイのコールセンターで働き、男娼の子を身ごもったという30代の女性に話を聞くことができた。

『だから、居場所が欲しかった。バンコク、コールセンターで働く日本人』を著した水谷氏が見た、その世界の現実とは――。

劣悪な環境なのか

「生活保護より安い給料で仕事してるタイのコルセン(コールセンターの略)なんて奴隷以下」

「要するにコルセンに一度落ちたら人生終わりということだな」

「わざわざ、給料安いタイに行ってコルセンやる日本人女性って、哀れだわ。日本じゃ、何もかも通用しない女だろ」

「売れ残った『負け犬』の巣窟」

「お前ら、日本から逃げてんじゃねえよ」

タイの首都バンコクにあるコールセンターについて、2ちゃんねるにはこんな書き込みがあふれている。いずれも辛辣な意見ばかり。

そもそも<バンコクコールセンターに堕ちた人たち・・・>というスレッドタイトルからして、そこで働く日本人オペレーターが蔑まれているように見える。

バンコクには現在、大手日系企業のコールセンターが2社ある。双方合わせるとオペレーターの人数は約300人。業務内容の中心は通信販売の受注で、商品は健康食品、家電製品、衣料品、雑貨などと多岐にわたっており、クレーム処理への対応もある。経費削減のため、日本から電話を掛けるとバンコクにつながる仕組みなのだ。

コールセンターが入居しているビル(著者撮影)

一体、どんな人たちが集まっているのだろうか。フィリピンで無一文になった困窮邦人を皮切りに、東南アジアの在留邦人の取材を続けてきた私だが、コールセンターという職場に妙に引きつけられてしまった。

その存在を知ったのは今から5年前の2012年秋口だった。アジア各国の現地法人で働く日本の若者たちがメディアで注目を集めていた時のことで、私もそんな若者たちを追いかけていたのだが、同じ現地法人でもとりわけ、コールセンターという職場だけが異質な空気を醸し出しているのが気になった。

 

彼らを取材してみようと思ったが、現地採用の日本人たちに聞いても、「コールセンターの人とはつながっていません」との反応がほとんどで、取材対象者を探そうにも手掛かりがなかった。まるでその職場だけ陽が当たっていないかのように、闇に包まれて実体が見えない。

それでも人づてに何とか紹介してもらった、ある30代の日本人女性オペレーター、青山理沙(仮名)と初めて会った時の彼女の言葉が、今でも強烈な印象のまま残っている。

「実は私、今、妊娠しているんです」

飲酒を辞めたというからその理由を尋ねると、そんな唐突な答えが返ってきたのだ。子供といっても、コールセンターで働く同僚の日本人男性が相手ではない。彼女のお腹に宿っているのは、「ゴーゴーボーイ」と呼ばれる連れだしバーで買ったアジア人男娼との間の子供なのだ。

しかも彼女以外にも、コールセンターで働く一部の女性たちは、ゴーゴーボーイに通って男娼を買いまくっているという。