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世界有数のビジネススクールが「家族企業」研究に注力するワケ

「所有と経営の分離」は本当に主流?

世界的に注目される家族企業研究

ここ数年間の間に、日本でも「家族企業」「家族経営」「ファミリービジネス」等の言葉がマスメディアでよく取り上げられるようになった。

2005年から家族企業の研究を始めた筆者(当時博士課程)としてはうれしさとともに、やっと日本でも関心が高まってきたかという、物足りなさを少し感じる。

なぜなら、世界の有名なビジネススクールの多くでは家族企業を研究する専門研究所を作り、大きなエネルギーを注いでいるからである。ここでは、なぜ日本をのぞく多くの国でこのような動きになっているのかを説明したい。

まず、学術的な文献を検索できるGoogle Scholarで、完全一致のマッチングを使用して"family firms"と入力してどれぐらいの研究が該当するのかを探してみよう。

Google Scholarで毎年ごとに"family firms"で検索した結果

本稿を執筆している時点では、約20,000件(英語と日本語の文献だけ)が該当する。次に2000年以後に絞って同じ検索をおこなってみると、17,800件がヒット。

この結果から分かることは、家族企業に関する研究の多くは(17800/20000=約89%)2000年以後に集中しているということである。

つまり、2000年を境にして学術の世界では何かが生じたことにより、家族企業の研究に関心が高まったことが示唆される。どんなことが起きたのだろうか。

 

アメリカ企業は標準ではなかった

1999年にファイナンスの分野のトップジャーナルである"Journal of Finance" に一本の論文が掲載された。そのタイトルは" Corporate Ownership around the World"であり、タイトルが意味するように世界中の企業の所有形態を明らかにした論文である。

内容はとても単純なものだが、この論文がファイナンスの分野のトップジャーナルに掲載された理由は、その結果が当時としては斬新でインパクトの強いものであったからである。

この論文では世界の27ヵ国を対象にし、各国で規模が大きい企業を20社、そして中間規模の企業10社を選び出し、企業を誰が所有しているのかを考察している。

学術の世界での基本的な考え方は1932年にBerle and Meansが"The separation of ownership and control" という概念を提示して以来(日本語では所有と経営の分離)、企業が大きくなるといずれは所有と経営は分離され、経営はプロの専門経営者が行うようになることを当然のように受け入れてきた。

この論文はその考え方が本当に正しいのかを実際のデータで検証しようと試みたのである。

得られた結果は米国と英国をのぞくと多くの国で所有と経営は分離されておらず、家族か政府が所有している企業が多いということであった。

つまり、学術の世界ではアメリカを標準として考えて研究を進め、所有と経営の分離を当たり前のように受け入れてきたが、実際はアメリカの方が例外であり、世界的にみると所有と経営が分離されていない家族企業が支配的な企業形態であった。

この論文の結果を受けて2000年以後、世界的に家族企業の研究は花を咲かせるようになるのである。

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