磐梯山噴火直後の惨状〔遠藤陸郎撮影。福島県立図書館デジタルライブラリーより〕
日本史 近現代史

1888年の日本では遊郭洲崎が大流行り、磐梯山が噴火した

新連載:時代の空気が気になって①

ずんずん調べるコラムニスト・堀井憲一郎さんが、明治時代からの新聞を読むことで、この国の近代を生活者として追体験していく超大型連載がスタート! まるでその時代・その場所にいたかのように、歴史の教科書ではわからない「当時の空気」を描いていきます。

第1回は明治21年(1888年)の日本。当時の日本人が関心を寄せ、新聞紙面を賑わしていたものとは?

はじめに

明治21年(1888年)からの日本を振り返ろうとおもう。

明治21年というのは、東京朝日新聞が創刊された年である。7月1日創刊、この日のぶんから縮刷版が読める。新聞を毎日読むことによって、日本の近代を生活者として眺めていこうという企画である。

もとは、日本のクリスマスの歴史を調べているときに、当時の新聞を連続して読んでいると(12月のぶんだけ読んでいた)、とても不思議な感覚に包まれ、おもしろかったからである。

近現代史については、大束な記憶はある。

清国と戦争して勝って、ロシアと戦争して勝って、アメリカと戦争したらめちゃめちゃに負けた。国が荒廃したので数十年かけて復興した。

……だいたいそんな感じだ。細かい記憶はない。細かい記憶がないまま、当時の新聞を読み続けてみたい。

 

人は歴史に生きているわけではない。

毎日のふつうの生活を生きている。

歴史の後方から眺めた明治半ばと、実際の明治半ばは、ずいぶん印象が違う。

歴史にまったく残らないが、とても世間の耳目を集めていた出来事が起こっている。

「酔月のお梅」というのは、この明治21年に知らぬ人はいなかっただろう(彼女が事件を起こしたのは明治20年のことであるが)。

たとえば沢尻エリカが「べつに……」と言って世間の耳目を集めたのは、いまからもう10年前2007年のことであるが、2007年の日本にいないと(そして芸能ニュースなどを見ていないと)当時の空気はまったくわからないのと同じである。

歴史には残らないが、当時の空気を形成していたものがある。

そういう歴史や教科書に残らない当時の空気を中心に、明治大正昭和の時代を見て行くつもりである。

新聞を読んでいるだけなので(歴史書と一緒に読まないので)、この先に何が起こるのか、よくわかっていない。基本、前もって調べることをせず、時間どおり、毎日の新聞を追っていくことにする。

つまり新聞で報道されないことは、そのまま知らないままである。

そういう、当時生きていた人たちの感覚で近代を見直していきたい。