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「燃料を海に捨てろ!」9・5JAL機炎上 緊迫現場の「実況中継」

空の密室でなにが起こっていたのか

9月5日に起きた「航空インシデント」。「空の密室」で何が起こっていたのか――。当該機の乗客が「恐怖体験」のすべてを振り返る。

CAたちの様子がおかしい

「オーマイガー、オーマイガー、ファイア、ファイア!」

9月5日午前11時。乗員・乗客251名を乗せた羽田発ニューヨーク行きのJAL006便は離陸した。直後、左窓側に座った欧米人の女性は、隣の日本人大学生の腕を掴んでこう叫んだ。

左エンジンから発火。外国人女性に腕を掴まれた学生本人が語る。

「離陸してから、普通の離陸時と違い、ガタガタと結構揺れていました。とはいえ、炎は私には見えなかった。最初は『ホントかよ?』と思ったんです。しかし、その後の機内アナウンスで、何かエンジンに深刻なトラブルが起こっていることを確信しました」

この学生を含む5人を引率していたのが、熊本大学准教授の小林牧子氏だ。学生とは離れて、前方の左窓側、非常口の脇に座っていた。彼女の座席からはエンジンは見えなかった。離陸後しばらくして、こうアナウンスが流れたという。

「当機は順調に離陸しましたが、エンジントラブルで羽田空港に引き返すことを決定しました」

乗務員が緊張した面持ちで、機内電話で何か話している。目の前に座っているため、小林氏の目には否応なくその様子が飛び込んでくる。

「最初は、時間通りに目的地に到着できるのか、スケジュールのことばかりを気にしていたのですが、目の前のアテンダントの様子がおかしい。ピリピリして、非常口に一番近い乗客に頻繁に話しかけ、たびたび機内電話で深刻そうな話をしていました。

そこでようやく、思った以上にまずい事態なのかと、焦りから不安に変わりました。エンジンが火を噴いていることを知っていたら、とても冷静でいられなかったと思います」(小林氏)

 

一方、右窓側に座っていたのが、ニューヨーク在住のヘアスタイリスト・遊佐崇氏だ。

「離陸した直後、普段聞きなれない、主翼が空気抵抗を極端に受けた感じの音と揺れを感じ、何事かと驚きました。『普段、訓練しているので安心してください』という機内アナウンスが流れ、通常ではないアクシデントが発生したことがわかったのです」

同機は離陸後、房総半島沖を旋回する態勢に入った。「ハドソン川の奇跡」と呼ばれた、USエアウェイズ1549便の不時着水事故が、機長の頭をよぎったに違いない。

'09年1月15日、乗員・乗客155名を乗せた同機は離陸直後、鳥が機体に衝突するバードストライクに見舞われ、両エンジンが停止。高度を維持できなくなったため、機長のとっさの判断でニューヨーク・マンハッタンのハドソン川に不時着水した。

乗員乗客は全員無事だったが、機長の冷静な判断がなければ、大惨事につながったと言われるシビア・アクシデントだ。

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〈今、左エンジンに加えて、右エンジンまで止まれば、空港と海のどちらを選ぶか……〉

非常時の訓練は十分に積んでいるとはいえ、乗員たちの緊張は最高潮に達していた。
JAL006便は、房総半島沖上空をさまようように旋回する。離陸してから20~30分経った頃だろうか、機長が機内アナウンスを行った。

「現在オイルを投棄しているため、あと30分で着陸します」

落ち着いた声色だったが、乗客の不安は消えない。遊佐さんが座っている席からは、燃料を放出している様子も見えた。着陸時の負荷を軽くするために必要な作業だ。逆に言えば、そこまでしなければ安全に着陸できないのか?