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ビジネスモデルの歴史的大転換に、日本だけが取り残されている

「大航海時代」に冒険者は見当たらず

新しい技術の進展によって、ビジネスモデルが大きく転換する。これは人類のフロンティアを拡大する。

この状況は、大航海時代に似たところがある。カソリック支配の社会が終わったのと同じように、産業革命以降続いてきた大規模化、効率化、組織化という流れが、終ろうとしているのだ。

しかし、日本はこうした流れに対応しておらず、大企業の劣化現象が顕著に生じている。

 

冒険企業が現れない方がよっぽど問題だ

仮想通貨を用いた資金調達であるICO(Initial Coin Offering)が話題を呼んでいる。売り出された仮想通貨が何百倍にも値上がりすることから、投機の対象になっている。そこで、これを取り締まろうとする意見が日本でも強くなっている。

ICOの現状にバブル的側面があるのは事実だ。したがって、ルールの設定は不可欠だろう。

しかし、日本で問題なのは、ICOそのものというよりは、ICOを行なうプロジェクトが、(皆無ではないが)ほとんどないことだ。

日本人のICOに対する関心は、もっぱら値上がり益に集中している。誠に残念なことに、「ICOという新しい仕組みを用いて、新しい技術を開発するプロジェクトを起こそう」ということではない。(ついでに言えば、ビットコインについてもそうだ。「どう使うか」でなく、「どれだけ値上がりするか」にしか興味がない。)

企業は劣化する

他方で、シャープや東芝など、日本を代表するとみなされてきた老舗企業の劣化がみられる。半導体事業の売却を巡る東芝の迷走ぶりを見ていると、「この会社には経営者がいるのだろうか?」という素朴な疑問に襲われる。(つい数年前まで、東芝は「理想的な企業ガバナンスを確立した企業」と言われていたのだが……。)

もっとも、古い企業が劣化するのは、当然のことだ。かつては経済をリードした企業が古いビジネスモデルから脱却できずに、ひたすら巨大化し、「意思決定が敏速にできないために身動きが取れなくなる」というのは、日本だけの現象ではない。アメリカでも、USスティールやGMなどのかつての名門企業が、いまでもアメリカをリードしているわけではない。

現代のアメリカ経済をリードしているのは、新しく生まれた産業の新しい企業である。時価総額のトップ5は、こうした企業で占められている。それらは、アップル、アルファベット(グーグルの持ち株会社)、マイクロソフト、フェイスブック、アマゾンだ。これらの企業群は、マイクロソフト以外の4社の頭文字をとって、「GAFA」と呼ばれる。

生物に新陳代謝が不可欠であるように、 企業も時代の条件に応じて交代することが必要なのである。
 
もっとも、企業の場合には、構成員は交代するから、企業が新しいものに生まれ変わって存続することは、原理的には可能だ。

しかし、実際には、それは非常に難しい。過去に成功した企業では、成功した事業を推し進めた人たちが現在でも企業内で重要な地位を占めている場合が多い。そうした人たちは、企業のビジネスモデルを大きく変化させることに対して、「抵抗勢力」となる。だから、会社の方向づけを大きく変えるのは大変難しい。

日本のように人々の企業間移動が限定的である場合には、とりわけそうである。「企業の基本的ビジネスモデルは変えられない」というのが、むしろ普通のことだ。

こうして、日本では、高度成長を牽引した企業や産業が、依然として経済全体を支配し続けている。

日本では、企業の新陳代謝は起こっていない。ICOを行う企業が登場せず、大企業の迷走が目立つのは、このためだ。

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