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受験勉強を放棄したのに誰よりも「働きマン」になったオンナ

A子ちゃんとB美ちゃんの複雑な感情④

元日本経済新聞記者にして元AV女優の作家・鈴木涼美さんが、現代社会を生きる女性たちのありとあらゆる対立構造を、「Aサイド」「Bサイド」の前後編で浮き彫りにしていく本連載。今回は、第2試合「学歴」対決のBサイド。大学付属女子校に通っていたにもかかわらず高卒で派遣OLになりキャリアアップしていった女性の複雑な感情を紐解いていきます。

*バックナンバーはこちら http://gendai.ismedia.jp/list/author/suzumisuzuki

内部進学を蹴って派遣OLに

女にとって学歴も職歴も大したものではなくて、アクセサリー程度に集めるならいいが、過度にその効能を期待すると裏切られるし、それに必要な時間的あるいは金銭的投資を考えるとそれほどの見返りがあるものではない。アクセサリーとしてのブランド効果は例えば東大とエルメスのバーキンが同じくらいだとして、エルメスを買ったほうがまだ効率が良い。

 

ただ、ではそう悟った大人たちがまた中学生くらいからやり直せるとして、どうせ大して効力のない学歴ならばと中卒や高卒で切り上げるかというとそうでもない。大して役に立たないものでもやはり目の前に選択肢があるならば自ずとそこに向かってしまうし、中卒より高卒が、高卒より大卒が、三流大卒よりは一流大卒がなんとなく偉いような価値観は、バカな中学生にも多少なりとも植えつけられている。

持っていても役には立たないが、持っていないとちょっと寂しい、そんなところである。

彼女が学歴にこだわらなかったのは、別に女性にとっての学歴の無意味さを早々に悟ったからでも、学歴を諦めるべき家庭環境にあったからでもない。ただ単に勉強や試験になんの魅力も感じなかったのと、学歴によって約束される将来は、今の楽しい日々を犠牲にしてまで欲しいものではなかったというだけだった。彼女は大学まで試験1つで行ける付属女子校の生徒だったにも関わらず、その試験は受けずに高卒で派遣OLになった。

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彼女の同級生で内部・外部受験含めて大学に進学せず浪人もしなかったのは、彼女を含めて5人もいない。1人は米の語学学校に入り、1人は美容師の専門学校に進んだ。就職したのは彼女だけで、専門学校組に比べて随分成績の良かった彼女の進路に、教師や同級生たちはやや面食らっていたらしい。中学から高校に上がる時のテストで彼女は学年50番目までに入っていた。中学受験時に至っては10番目近くの超優秀な成績だった。

派遣として仕事を始めたのは食品メーカーで、基本的には営業補佐のような業務内容だった。もともとしっかり者で頭の良い彼女は、すぐに職場で頼りにされる立場となり、比較的誰とでも簡単に打ち解ける性格のせいか、同じ派遣の年上女性社員などからやっかまれたりいじめられたりすることもなく、1年以内には毎日のように飲み会を頼まれる立場となった。