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週刊現代

『非モテの品格』著者が選んだ、読めばますます読書欲が湧くこの名作

自分を問い、社会を問いつつ読む10冊

アニメの巨匠から学んだこと

今回は子どもの頃から現在まで、影響を受けた順に順位をつけました。

まず1位の『ジョジョの奇妙な冒険』ですが、中学生のときに作品の連載が始まったので、それから足かけ、30年くらいは読んでいますね。

ジョースター一族とその宿敵たちが、2世紀以上にわたって闘いを繰り広げる大河物ですが、その魅力はずばり、人間の弱点こそが強さになること。一見マイナスに思われるものが強さに反転していく。当時は単に面白いと思って読んでいたんですけど、今振り返って考えるとそうした普通の少年漫画らしくないところに惹かれていたんですね。

 

また、本作は各章ごとに主人公が変わります。主人公はいずれも「ジョジョ」という愛称をもっていて、彼らに共通するのは、「自分の欲望を貫く」こと。字面だけだとあまり感心できることじゃないんですが、それが思想なんです。僕自身は子どもの頃から特徴や自我が薄くて、それだけにひたすら自分を貫くジョジョに憧れました。

2位は『風の谷のナウシカ』。ジブリの作品にはずっと親しんできたんですが、漫画版の『ナウシカ』は成人した頃に読み、これまで持っていた「ジブリ」像が一変しました。『魔女の宅急便』のような朗らかな楽しさではなく、核戦争後の荒れ果てた地球という、ナウシカのどろどろした世界観に最初は戸惑ったんですよね。

ただ自分が『宮崎駿論』を書く過程で、その意味もわかってきたように思います。宮崎作品は楽しさの中にも、人類が進歩しても食い止められない、憎しみ合いや虐殺などの背景がある。文明の暗部をごまかさず、大きなものを問う姿勢に惹かれました。

本作は、僕の自然観や生命観の根本にもなっています。理想的に調和しているわけではないのに、生命や自然が他者と混ざり合い、その過程で初めて進化がある。

そうした「共生」を知る意味では、寄生生物と融合した生を描く4位の『寄生獣』も、僕にとって貴重な作品でした。

私が思う戦後最大の作家

漫画ではなく小説となると、武田泰淳ですね。個人的には戦後最大の作家だと思っています。高校生の時に教科書に「誰を方舟に残すか」という短編が載っていて、そこで初めて泰淳を読んだんですが、あるアメリカ映画について論じた箇所が印象的だったんです。

その映画では小型の飛行機がジャングルに不時着し、脱出するための飛行機に乗る人が選別され、死刑囚や老人が残ることになるんですね。若い人や子どもが助かって、いやあよかったという結末なんですけど、泰淳は何がいいんだと、怒りを露にする。

この判断には能力主義、つまり「この先、役に立つかどうか」が前提にあり、そうした不平等さに抵抗を続ける。それが泰淳なんですね。