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学校・教育

東大、東北大…国立大学で進む「雇用崩落」の大問題

大学教育の根幹が崩れていく

これが国立大学の現状か…

筆者はこれまで、日本各地の大学で起こっている「非常勤講師・職員の雇い止め」問題をレポートしてきた。今後、大学は職員の雇い止めをさらに進めていくことは想像に難くない。

今回は、なぜ大学が「雇い止め」を進めているのか、そして、その安直な方針が今後の大学運営にどのような影響を与えるかについて記したい。

 

2015年5月、日本国内の大学関係者が驚愕する、ある報告書が作成された。執筆者は、国立大学協会政策研究所の豊田長康所長。「運営費交付金削減による国立大学への影響・評価に関する研究」と題されたこの報告書には、国からの大学運営費交付金が年々削減されたことに連動して、国立大学で書かれた論文の数が減少していることを明らかにしたのだ。

OECD加盟国で論文数が減っているのは日本だけであることも示されているうえ、2012年時点での人口当たりの論文数は最も少ないという。

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「これが日本の国立大学の現状か…」

多くの大学関係者は「日本の教育は落ちるところまで落ちてしまうのではないか」と強い危惧を覚えたという。

国が国立大学に支出する予算は年々削減される一方で、さらなる論文数の減少が懸念される。しかし、問題視すべきは論文数の減少だけではない。筆者はこれから大学で起こる「教職員数の急減」が、大学運営により深刻な影響を及ぼすと考えている。そしてそれは、大学のレベルの低下にもつながるだろうと危惧している。

国立大学の雇用はいま崩壊の危機にある。その背景を、国の大学政策と、大学が抱える問題から探ってみる。

筆頭格は東大・東北大

現在、全国86の国立大学法人で働く非常勤教職員は、約10万人いるといわれている。筆者は、そのうちの多くの教職員が、2018年4月以降雇い止めとなる可能性があることを、東京大学のケースを中心に伝えてきた。(<東京大学で起こった、非常勤職員の「雇い止め争議」その内幕> http://gendai.ismedia.jp/articles/-/52605

きっかけは2013年4月に施行された改正労働契約法。簡潔に言えば「5年以上同じ非正規労働者を同じ職場で雇う場合、本人が希望すれば無期労働契約にしなさい」とする条文が新たに加えられたことにある。

現在、多くの職場がこの法律への対応を余儀なくされている。日本国内の非正規労働者は約450万人いるとみられており、企業の対応はまちまちだが、法改正から5年が経過する2018年に向けて、各企業では、非正規雇用労働者の無期雇用への転換を進める動きが活発になっているのは間違いない。

にもかかわらず、なぜか大学は世間の動きに反して「無期雇用化」に非常に消極的で、国立大学の多くが、非常勤教職員の無期雇用への転換を拒んでいることが表面化している。

しかも大学の雄である東京大学と東北大学が、その先頭に立っているのだから驚くほかない。