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金融弱者を狙う「強欲の銀行カードローン」その実態

自己破産者まで生まれたその背景

金融庁がようやく重い腰を上げた。急増する「銀行カードローン」に的を絞り、大手行を中心に9月から立ち入り調査に入ることにしたのだ。

消費者金融では禁じられていたはずの多額の融資が、なぜ銀行ではなりふり構わずに拡大するのが許されてきたのか。『強欲の銀行カードローン』を上梓した朝日新聞記者・藤田知也氏が、弱者を狙い撃ちにするカードローンの強欲な実態を暴く。

50万円の融資から、自己破産へ

母を亡くし、都内で独り身の実家暮らしだった50代の男性。眺めていたスマホ画面に浮かび上がるのは「スマホでかんたん申し込み」「最短30分審査回答」「総量規制適用外」といったカードローンの広告だ。目にとまったネット銀行の一つに、おそるおそる10万円の借り入れを申し込んでみた。それが転落へと続く道とは気づかずに――。

男性は当時、複数の消費者金融で計100万円超の借り入れを抱え、月末の返済に追われていた。仕事中に痛めた足の治療費や生前の母親の介護費がかさみ、母親の死後は自暴自棄にもなって飲み食いや競馬でカネを費消した。ビルメンテナンスの仕事で年収は約400万円。消費者金融からの借り入れは総額で年収の3分の1以下に規制されているため、男性はもうお金を借りられない「天井」にぶつかっていた。

そんな時に見つけたのが、銀行カードローンだった。

銀行には社会的な信用があり、同時に借金の審査には厳しい印象もあった。消費者金融で借りられなくなった自分では、どうせ無理だろう。そう考えながらも、試しに個人情報をスマホに入力し、かかってきた電話で簡単な質問に答えた。間もなく返ってきた審査回答に目が釘付けになった。画面には「融資枠50万円」と書かれてあったのだ。

「助かった、ありがたいな、と心の底から思いました。金利は12%くらい。それまで借りていた消費者金融よりも安いから『お得だ』とも感じました。いま思えば、本当にバカでしたけどね」

 

借金返済をしのぐつかの間のつもりが、現実はそこで収まらない。決められた融資枠の範囲なら、いつでも好きなだけ借りられる、その代わり金利が高くつく、というのがカードローンの特徴だ。しかも、銀行は毎月少しずつ返せばいいかのように誘導してくるが、それでは完済までにかなりの時間を要し、その間に利息もたっぷりと搾り取られる仕掛けになっている。

借りるカネは銀行のATMを操作して引き出すせいか、一部の利用者には、まるで自分の貯金が増えたかのような錯覚を与えるようだ。男性もそうだった。50万円の融資枠ができて気が大きくなり、カネづかいの荒さに拍車がかかった。数カ月たつと頼んでもいないのに、ネット銀行は「キャンペーン」という名目などで融資枠を100万円まで広げてくれた。

だが、月々の支払いは必ずやってくる。消費者金融も含めて計6万円程度だった返済額は十数万円まで膨らみ、振り込まれる給料の半分は借金の返済に回さざるを得ない。さすがにネット銀行でも借りられない2度目の「天井」にぶつかると、そこからは食事を削り、必要な病院代さえ払えない生活が始まる。

健康を保てれば完済にたどり着く可能性もあるが、少しでも融資枠が空くとその分だけ借りたくなるのが人間の性だ。男性はお金のやりくりに心をすり減らし、うつ病となって会社を休職。復帰のめどがつかず、収入も見込めなくなって、ついに今年1月に自己破産を申し立てることになった。