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AI 週刊現代

間もなく、AIスマホが上司になる日がやってくる

会話もメールもすべて管理され…

SF世界の産物だと思われていた技術が、様々な難問を抱える日本社会に革命を起こす日は近い。これから起こる本当の話をしよう。

「勝手に」賢くなっていく

「顔色が悪いですね、昨日飲み過ぎたんですか」

「いいえ、昨夜から少し熱があって」

「あなたは6月と9月にも風邪を引いていますね。季節の変わり目に弱いみたいですから、身体には気をつけたほうがいいですよ。今日は13時から社内全体会議がありますから、それまでにプレゼン資料をまとめておいてください。

あ、6ページ目のグラフの数値、前回のデータそのままになっていましたよ。最新のデータが営業から届いているはずですから、ちゃんと修正して提出しておいて。

それからこの前提案してくれた企画は上に通しておきました。この企画は過去の実績から見るに、あなたの得意分野でしょうから、至急進めておいてくれると助かるな……」

 

こちらの体調や仕事のスキルを把握し、ちょっとした手抜きや心の動きも見透かしたうえで、優しく諭す。パワハラなど決してしないであろうパーフェクトな上司だ。

その上司はスーツの左胸ポケットにすっぽり収まっていた。今時のスマートフォンのような通信機器には、経営方針を理解し尽くし、社員に適切な指示を下すAIがプログラミングされている。

部下である社員は一人ひとりがそのスマホを肌身離さず持たされ、AI上司からの指示を受けつつ仕事をこなす。

この上司は鋭い観察眼を備えている。GPS機能やカメラ、体温センサーなどをフル活用し、部下の仕事の進捗や体調まで逐一把握し、常に正しい指示を与えるのだ。

AIスマホが人間の上司になる――近未来SF小説の読みすぎと鼻で笑われるかもしれないが、2028年ごろには、このようなオフィスの光景が「当たり前」になっている。

「もっと先でしょ」

「自分が生きているうちは関係のない話だ」

本当にそうだろうか。AIの世界では「ディープラーニング」という学習方法が大きなブレークスルーを生んだ。わかりやすくいえば、これまでは人間が作ったプログラムをもとに動いていたAIが、自ら学習し、成長していくようになった。

ついこの前まで、動物にしかできないと思われていた能力で、これによりAIは「勝手に」賢くなっていく。

ディープラーニングの驚異を世界に知らしめたのが、コンピュータ囲碁プログラム「アルファ碁」の快進撃である。「世界最強棋士」と目された中国の柯潔氏との三番勝負に、アルファ碁は快勝した。

「世界最強棋士」と目された中国の柯潔氏 Photo by GettyImages

コンピュータが人間の脳を超える瞬間が、こんなにも早く訪れるとは多くの人が思っていなかっただろう。

しかもその成長速度は、人間が捕捉できないほど速い。ITの世界では「ムーアの法則」という考え方がある。半導体の同じ面積に搭載できるトランジスタの数は、18ヵ月で2倍になり、驚くほどのスピードで処理能力が上がっていくのだ。

AI導入で労働時間が激減

業界では「新ムーアの法則」と呼ばれるほどのスピードで成長するAI。それは人工知能が別の人工知能の学習を助け、相互的に情報の解析能力を上げていくからだ。

先述の囲碁の例でいえば、AI同士が対戦を繰り返すことで世界チャンピオンを打ち負かした。