米国の「負け犬白人層」にそっくりな層が日本に生まれつつある気配

キーワードは「旭日旗」だ
川崎 大助 プロフィール

しかし世の中いつも、論理的に動くわけではない。現実の戦後日本社会では、旭日旗は「とくにおとがめなし」で、自由にはためき続けた。だから、戦前の日本を直接的に記憶する世代どころか、どの年代においても「日本人だったら、だれでも」見慣れた旗こそが旭日旗となった。おそらく、日章旗の次ぐらいに。

そんなわけだから、旭日旗に近いモチーフをブランド・ロゴや商品デザインに転用した例は、数え切れないほどある。

 

なによりも影響が大きかったのは、自衛隊が発足した瞬間から、戦前とまったく同じ役割にて旭日旗を使用し続けていることだろう。

だから「それが悪い旗だ」なんて、思えるわけがない。かつての敵国だったアメリカだって、なにも文句言ってないじゃないか!――と思う人がいたとしても、不思議はない。

「メタルと言えば旭日旗」

実際問題、旭日旗は「アメリカでも」とても人気があった。80年代にはとくにそうだった。ロックの世界、なかでもヘヴィメタル界で、かなり積極的に好まれたデザイン・モチーフのひとつが「旭日旗」だった。

「KISS」二代目のギタリスト、ヴィニー・ヴィンセント(Photo by gettyimages)

たとえば、こんなものだってある。インターネットのオークション・サイト〈ebay〉にて僕は、〈ハード・ロック・カフェ〉ラスヴェガス店のピンバッジ、「ヘヴィメタル・パンダ」と紹介された一品を発見したことがある。

袖を切り落としたジャケットに鋲付きのリストバンド姿で、目を閉じ口を開いてギター・ソロ中のパンダの額には「旭日旗」モチーフの鉢巻きがある――と、こんなイメージが、アメリカ人のなかに当たり前のように息づいているわけだ。

旭日旗デザインは、たしかに鉢巻きの柄としてよく使用されていた。英語では「Rising Sun Headband」となることが多い。次点がTシャツやリストバンドだろうか。しかし「メタルと言えば旭日旗」のイメージを決定づけた重要アイテムが、2点ある。それはギターと、レコード・ジャケットだ。

まずはギター、これは米ブランド〈シャーベル〉の「サン・ディアマス」シリーズが最も有名だ。80年代中盤、同シリーズに旭日旗のペイントが施されたモデルが登場して、米英および日本で人気を得た。

シャーベルと言えばハイ・パフォーマンス指向のギタリストご用達のブランドだったから、ここから「メタル界」や「ハードロック界」へと、旭日旗デザインが一気に広まっていったのではないか、というのが僕の見立てだ。たとえば人気バンド、KISSの二代目ギタリストだったヴィニー・ヴィンセントはシャーベル・ギターの愛用者だったのだが、彼が旭日旗デザインのTシャツを着用してステージに立っている写真もある。

もうひとつは、日本が誇るヘヴィメタル・バンド、ラウドネス(LOUDNESS)のアルバム・ジャケットだ。『サンダー・イン・ジ・イースト』(84年)と題されたそのジャケットには、全面に旭日旗が描かれている。というか、旭日旗の上にバンド・ロゴを配置したデザイン、だった。かなりのインパクトがある一品だ。

このアルバムは当時アメリカでも発売され、ビルボード総合チャートで最高位74位を記録。日本のロック・バンドとして空前の成功と呼ぶべき快挙だった。そして繰り返されるツアーによって、「旭日旗」はアメリカのメタル・キッズに浸透していった。

加えて、80年代のアメリカ音楽界では日の丸、つまり日章旗モチーフも流行っていた。たとえばマイケル・ジャクソン「BAD」MVのバック・ダンサーのひとりが「日の丸の鉢巻き」を締めていたことは有名だし、ヴァン・ヘイレンのドラマー、アレックスや、プリンスのバンド「ザ・レヴォリューション」のギタリスト、デズ・ディッカーソンらも同様の鉢巻きをしていた。ときには「神風」などの漢字入りで。