企業・経営

amazon追撃を狙うLINEの「戦略」

ただの通話アプリでは終わらない
加谷 珪一 プロフィール

同社は7月に入ると、飲食店の出前メニューを注文できる新サービス「LINEデリマ」をスタートさせた。宅配ポータルサイト「出前館」と提携し、出前館に登録されている吉野家などの宅配メニューをLINEのアプリ上で注文することができるというものだ。

出前の種類はカテゴリー別や地域別で選択できるが、LINEの今後の方向性を顕著に示しているのは、チャット形式の検索だろう。LINEデリマの公式アカウントにアクセスし、例えば「中華が食べたい」と入力すると「中華のお店はこちらです」といった形で返信してくる。これをタップすれば該当するお店を一覧することができる。

チャットでの検索は、今のところ特定のジャンルや店舗のみが対象となっており、やり取りはまだまだ稚拙だ。言い方は悪いが「お遊び」の領域を出ていない。

だが、過去の多くの新技術がそうであったように当初は「お遊び」に過ぎないとしても、対話型AIスピーカーが普及し、利用者のデータが蓄積してくれば、AIによる出前の注文は一気に高度化してくる可能性が高い。

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目指すは「AIポータル・サービス」

ここからは筆者の推測だが、近い将来、AIスピーカーに「今週末に5人でホームパーティをするのでデリバリーを頼んでおいて」と話しかければ、AIが状況を自動的に分析して適切なデリバリーを注文するといったことが可能となるだろう。

パーティに参加する友達の名前を言っておけば、LINEは各人のデータを分析することで、好き嫌いなども最適に判断してくれるはずだ。LINEにはカレンダーを共有し、友達の予定を調整する機能があるので、AIが予定の調整を代行することはそれほど難しい作業ではない。

これは外食でも同じことが言える。LINEはレストランの予約ができる「LINEグルメ予約」のサービスを今年2月に終了している。

 

食べログを初めとするグルメサイトに対抗できなかったことが主な理由と考えられるが、AIによるアシスト・サービスが普及した場合、わざわざLINEが自前でグルメ予約サイトを運営する必要はなくなる。複数の予約サイトを横断的に検索し、最適な予約を入れることが出来てしまうからである。

LINEでは、グルメだけにとどまらず、生鮮食料品や医薬品など、様々な分野の注文やデリバリーに対応できるよう準備を進めているという。

アマゾンは自身が通販事業者であり、自ら在庫も抱えるAI事業者ということになるが、LINEは各サービス事業者をつなぐAIポータル・サービスを目指しているのかもしれない。

いずれにせよLINEが、従来の枠組みを超えた新しい取り組みを模索しているのは間違いない。現時点においてこれらの施策がうまくいく確証はないが、同社が大きなポテンシャルを秘めているのは確かだ。