企業・経営

amazon追撃を狙うLINEの「戦略」

ただの通話アプリでは終わらない
加谷 珪一 プロフィール

AI活用

その片鱗は、このところ相次いで投入している新サービスにおいて垣間見ることができる。同社は今年7月から会話型AIスピーカーである「WAVE(ウェーブ)」の先行発売を開始した。秋には本格的な販売に踏み切る予定である。

同社は親会社のネイバーと共同で、クラウド型AIプラットフォームである「クローバ」を開発している。

ウェーブはクローバに対応しており、利用者が話しかけると、聞きたい音楽をかけてくれたり、知りたいニュースを読み上げてくれたりする。LINEでメッセージを送ったり、届いたLINEのメッセージを読み上げたりすることも可能だ。

AIスピーカー「ウェーブ」 Photo by GettyImages

これはアマゾンが米国で販売している「エコー」と同じような製品で、エコーはすでに2500万人以上の利用者を抱えている。アマゾンはネット通販の会社なので、対話型スピーカーを投入する意味は大きい。AIとやり取りしながら、買い物をAIスピーカーで済ませてしまうという使い方が想定されるからである。

LINEの場合、今のところネット通販企業ではないので、ウェーブは当面の間、単にラインのメッセージを読み上げたり、天気を知らせてくれたりする便利なツールにとどまることになる。

当然のことだが、それだけでは大きなインパクトにはなりにくいし、導入への動機としてもやや弱い。こうした対話型スピーカーは、モノやサービスの販売につなげてこそビジネス的に大きな意味を持ってくるはずだ。

実は、このギャップを埋めるため、LINEは対話型スピーカーと平行し、商取引に関連した新サービスを次々に打ち出している。

6月にはコンビニ大手のファミリーマートと次世代店舗について業務提携し、LINEが開発するクラウド・ベースのAIサービスとファミリーマートの店舗網を連携させる方針を明らかにした。

具体的な内容は明らかになっていないが、ファミリーマートにおける購買データをAIが分析し、LINEのメッセージング機能を使って最適なクーポンを送付するなど、個人ごとにカスタマイズされた販促活動の展開が予想される。

対話型AIスピーカーと連動させれば、朝出勤する前に、今日、コンビニで何を買ったらよいのかAIと会話することも可能となるだろう。

 

技術はまだまだ稚拙だが…

この取り組みは、小売店のあり方を根本的に変えてしまう可能性を秘めている。

これまでの小売店は、どんな顧客が来店するのか分からないまま、商品を陳列し、売れるのを待つという受動的なビジネスだった。隠れた顧客ニーズをいかに探し出すのかが店側の腕の見せ所になる。

ところが、LINEの利用者向けにAIを使って能動的に働きかけるサービスが定着すれば、店側は顧客がどのような人物なのか理解した上で、あらかじめ顧客のニーズに最適化した商品を揃えることができるようになる。

この考え方をもう一歩進めれば、米アマゾンが米国で展開しようとしている、人工知能を使った無人コンビニと同じ考え方に行き着く。

無人コンビニは、アマゾン会員が来店することを大前提としているので、立地条件が大幅に緩和される。また来店者の嗜好に合わせて店ごとに商品構成を変えるといった対応を行うことで、客単価の大幅なアップが見込める。

LINEはファミリーマートと提携し、小売の世界への足がかりを得る一方、外食の分野にも触手を伸ばしている。