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トランプが言う「あらゆる選択肢」は実際、どのくらい現実的か

対北戦略、意外と手詰まりかも…
海野 素央 プロフィール

支持者の「ご機嫌とり」に忙しい

このように、トランプ氏が選択肢として持っている主な「カード」は、いずれも北朝鮮問題の抜本的な解決には結びつかないことがわかります。一方で、プレイヤーたるトランプ大統領本人にも大きな課題があります。それはトランプ大統領の「リーダーシップ」のあり方の問題です。

前述した通り、北朝鮮の核・ミサイル開発への対応については、現在各国の間に明らかな温度差、溝、そして相違があります。トランプ大統領は、この問題解決のためにステークホルダー(利害関係者)間の温度差を縮め、溝を埋め、相違を乗り越える「調整型リーダーシップ」を発揮しなければならない状況に直面しています。

 

ところが、トランプ大統領はそもそも、そのような「調整」とはまったく逆の手法を使って大統領の座を勝ち取った人物です。人種・民族間の緊張度を高め、分断を深め、イスラム教徒の一時的入国全面禁止といった極端な政策を打ち出して、他の候補との相違を強調することが、トランプ大統領の勝利の原動力でした。

「テーブルの上にはすべての選択肢がある」といっても、その選択肢が実際に機能するためには、ステークホルダー間の調整が欠かせません。こうした調整ができないにもかかわらず「選択肢」を論じることは意味がなく、結局はいずれも何の値打ちもない「画餅」となりかねないのです。

もう一つトランプ大統領が抱える問題は、自身の支持基盤を嫌でも常に意識せざるを得ないことです。

筆者がこれまでの記事でも指摘したように、これまでもトランプ大統領には、支持基盤を強く意識した言動や政策をとる傾向がありました。もちろん過去のどの大統領にも多かれ少なかれそのような傾向はあるのですが、トランプ大統領の場合は露骨に、かつ巧妙に支持基盤をつなぎ止めようとしています。

例えば、先日の南部バージニア州における白人至上主義者と反対派との衝突事件について、トランプ大統領が見せた「双方に非がある」という「喧嘩両成敗」の対応です。これが、自身の支持基盤の一角を成す白人至上主義者を意識した対応であったことは明らかです。

さらに大統領は8月25日、西部アリゾナ州マリコパ郡の元保安官で人種差別主義者とされるジョー・アルパイオ被告に恩赦を与え、9月に入ると、オバマ政権が導入した幼年時に親に連れられて入国した不法移民の子供の在留措置(DACA)を撤廃すると発表しました。これらの政策の狙いも明らかに、反移民・反難民の支持者をつなぎ止めることでした。

北朝鮮問題についても、すでにトランプ大統領は支持基盤を強く意識した言動をとり始めています。まず、大統領は自身のツイッターに「米国は日本と韓国に高性能の軍事装備を大量に購入することを認めるつもりだ」と書き込みました。この発言には、北朝鮮及び中国に対する牽制のみならず、同時に支持基盤の1つである軍需産業からの支持をつなぎ止めようとする意図が透けています。