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AI ロボット

AIがブームで終わるかどうかを見極める「シンプルな方法」

「ゼロ原理」をご存知ですか?

「自己意識」を持ったロボットをつくる、コロンビア大学のホッド・リプソン教授。哲学的な課題を扱いながらも、人工知能(AI)の具体的応用としての自動運転についても『ドライバーレス革命』という本を出して、世に問うている。

前編:人工知能と哲学の時代「意識を持つことができるか」という難問
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/52863

10月に東京で開催するシンポジウム「AI and Society」では、AIが社会に与える影響を議論するが、一般の人にとっては自動運転こそがもっとも目に見える形で社会を変えていくAI技術ではないだろうか。

今回、リプソン教授に、AIによる自動運転はどこまでできているのか、そして自動運転が社会に浸透してくると人間社会がどう変わっていき、どんな波及効果が期待されるのかインタヴューした。

そして、AIが大流行しているが、これが単なるブームで終わるテクノロジーなのか、本当に社会を変える力をもっているのか、見極める方法があるという。

リプソン教授(中央)

AIは「透明」だから難しい

金井:リプソン教授は、自動運転について『ドライバーレス革命』という本を出版され、現在では日本でも翻訳がでています。ロボット研究からどのように自動運転の分野へ関心を持つようになったのでしょうか。

リプソン教授:自動運転への興味は、まさにそれがAIの要素があるからです。個人的に面白いと思う理由がいくつかあります。1つはロボットとAIにずっと興味があり、一般の人たちにむけてなぜロボットとAIといったテクノロジーが重要なのかを伝えたいと思っていたからです。

自動運転はAIのもたらす発明でもっとも重要なテクノロジーとなるのではないかと思います。AIが活躍するのは映画の話だと思っている人も世の中にはたくさんいて、実生活ではAIなんて全然見かけないじゃないかと言ってきます。AIといえばハリウッドの映画にでてくるロボットばかりで、現実には全然いないではないかと。

AIにとって難しいのは、それが日常では全然目に見えず「透明」なところです。空気のように目に見えないのです。しかし、現代のAIは我々の関心事である会社の株価や天気予報、次に流れる音楽の選択、次に何をクリックするかまで、あらゆる場面でAIは関係しています。

企業が生き残れるかどうかは、このAIというテクノロジーを自在に使いこなせるかどうかにかかっています。それだけ重要であるにも関わらず目には見えないのです。この透明性によって、一般の人にAIのインパクトを実感してもらえないということには、私自身を含めてAI研究者は頭を痛めています。

しかし、自動運転車によって、AIが私達の生活に大きく入ってくる様子が実感できるだろうと思います。そのうち当たり前になり、いつでも気軽に乗れるようになるでしょう。

 

金井:AIはそこらじゅうで使われているといいますが、私自身の感覚では、まだまだビジネスにどう活かしていけば良いのか悩んでいる大企業もたくさんあるという印象です。そして、AIを何に応用したらビジネスになるのかを見つけ出すことも大変なことのように思います。

リプソン教授:そうは言っても、実のところ一般の人が考える以上にはAIは社会に浸透してきています。

もちろん、どのレベルのものをAIと呼ぶかにもよるでしょうが、スマートフォンの地図で地点Aから地点Bへの移動の仕方を調べるだけでも、そこにAIは利用されています。

だけど、それに気が付かないのです。近所のレストランを検索するときも、どれだけAI技術が目に見えないところで使われているのです。

音声認識、自然言語処理、大容量情報から効率的に検索するアルゴリズム、最短経路の認識など、これらは全てのAI技術が駆使された上で実現されているのです。

金井:確かにそのとおりですね。

リプソン教授:「一番近くのお寿司屋さんはどこですか?」というありきたりの質問についても、現代ではすぐに答えを得ることができます。その裏には膨大なAI技術が隠れています。そして、それらは目に見えないのです。

というのは、見えないほうがよいから、あえて目に見えないようにしているからです。そうすることで、日常的に使われる技術となっているのです。自動運転車についても、同じように我々の日常の中にスムーズに入ってくることでしょう。

しかし、そこで一度立ち止まって、ドライバーレスの車は、AIによって実現されていることを確認するチャンスだと思っています。

自動運転に必要な技術は何十年も前にすでにほとんどできていました。そして自動運転を可能とする最後のピースがやっと新しい種類のAI技術によって確立されたというところです。

そのことについてまず話しましょう。そして、自動運転が社会にもたらす波及効果について話し、AIが今後どのように我々の生活の全てに影響していくかを見ていきましょう。