日本中のディープな「奇祭」を巡り、私はこの国の深淵をのぞいた

そこに封じ込められていたのは…
小林 紀晴

写り込んだ「過去の日本人」

祭りは1000年以上の歴史を持つといわれているが、1000年前はともかく、50年前、100年前、200年前の人の姿を確実に眼前にしているという実感があった。祭りの中に過去の人の表情、声、所作といったものを垣間見たのだ。

私は長いあいだ写真に過去は写せないと思い込んでいた。目の前のものを、今しか撮れないのが写真の大前提に変わりないが、それでも祭りを撮ることで、「遠い過去」も写せることを知った。

このとき、祭りを通して、「古層」を撮るという背骨みたいなものが見えた。すると、より深く「古層」を撮りたくなり、自然と諏訪以外の日本全国の祭りへ目を向けるようになった。これが本書『ニッポンの奇祭』(講談社現代新書)につながっていった。

 

実際に撮り始めてみると、奇祭と呼ばれる祭りを中心に巡っていることに気がついた。場所は半島の先、離島、豪雪地帯、深い山の奥、限界集落……。稲作が難しい、あるいは遅くまで行われなかった地が多いことも不思議と共通していた。ヤマトの影響をあまり受けなかった地と言い換えることもできるだろう。

ただ、当初はそれらのことを特別意識していた訳ではない。写真として、どれだけ強いビジュアルを撮影できるか、そのことを常に考えていた。写真的な発想が出発点だ。

日本には興味深い祭りが本当にたくさんある。それらを、もっと撮ってみたい。だから、私の『ニッポンの奇祭』の旅はこれからも、まだまだ続く。

読書人の雑誌「本」2017年9月号より