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葬式ビジネスに染まった僧侶が、無欲の「ロボ導師」に置き換わる日

私たちの死を葬祭業者に委ねていいのか
島田 裕巳 プロフィール

他業種からの参入ということでは、ブライダル産業から葬祭業へという流れがある。結婚する人間の数が減り、経済的な事情で結婚式を挙げないカップルが増えているからだ。

ブライダル産業から葬祭業への影響は、葬式の際に、故人の生涯をスライドショーで紹介するやり方が増えているところにあらわれている。

これなど、まだまともな方で、過剰演出も増えている。葬祭業者の司会が、故人のことなどまったく知らないのに、式のあいだ、故人を失った悲しみを至るところで強調し、参列者を煽ったりするのだ。

最近では、お別れと称して故人の顔を拝見させるだけではなく、参列者に顔を触らせるところも増えている。参列者が「そこまでは……」と思ってためらっても、業者はさわらずには済まないよう仕向けていく。

葬式の最中に文句を言うわけにもいかない。葬式を出す喪主の側も、経験が乏しい、あるいはまったくないので、業者の言いなりになってしまいやすいのだ。

 

葬祭業者が日本人の死を支配する

以前は、都会でも自宅で葬式を挙げることが多かった。それがいつの間にか、葬祭会館での葬式が一般化した。とくに地方では、すでに述べたように、車中心なので、駐車場のある葬祭会館でないと葬式を挙げられない。

葬式は葬祭会館でやるのが当たり前という流れが作られることで、葬式は業者が主導権を握るようになってきた。依頼する側は、業者が決めたやり方に従うしかなくなってきたのである。

自宅で葬式をしていた時代には、近隣が手伝ってくれるのが当たり前だった。村なら、「葬式組」があり、それがすべてを取りしきってくれた。

今の時代、葬祭業者が葬式において主導権を握る最初のきっかけは、病院からの遺体搬送である。遺体搬送は葬祭業者が行う。搬送だけで、別の業者、たとえばもっと料金の安い業者に依頼することもできないわけではない。だがそれは、かなりやりづらい。

専門家は、相見積もりをとって、料金を比較した上で業者に頼むべきだとアドバイスする。だが、死は急な出来事で、その余裕がないのが普通だ。実際、遺体搬送は、車内の防水に注意すれば、専門の業者でなくてもできる。だが、そこまでやる人はほとんどいない。

葬式の簡略化が急速に進んだのも、葬祭会館で行われる葬祭業者主導のやり方が、故人を弔う上で必ずしも必要なものと思えないことも一つの原因になっているのではないだろうか。

本来、葬式はビジネスとはなじまないものである。葬式がビジネスになることで、僧侶も宗教家としての役割を果たすのではなく、ビジネスの中にすっかり組み込まれてしまっている。

それならば、ビジネスのことを考えていないロボット導師の方がいい。そんな思いを抱く人たちも、これから現れてくるに違いない。