北朝鮮

北朝鮮の「電磁パルス攻撃」は脅威か?米専門家の懐疑論

恐怖を感じるほど、思うつぼ…?

恐怖をあおるばかりだが…

北朝鮮が2017年9月3日、6回目の核実験を行った。欧米の軍事専門家らの間では、原子爆弾よりも威力の大きい水素爆弾だったとの懸念が広がった。

北朝鮮国営の朝鮮中央通信は、3日の核実験実施の発表前に、金正恩が大陸間弾道ミサイル(ICBM)の弾頭部に搭載できる水爆を視察した様子を伝えている。その際に同通信社は、「強力なEMP攻撃もできる」と報じ、これがさらなる懸念を生んでいる。EMPとは、上空で核爆発などを起こすことで発生する電磁パルス(EMP)のことで、そのエネルギーが地上のインフラや電子機器などを麻痺させる可能性があるとされている。

この核実験を機に、日本でも北朝鮮によるEMP攻撃に関心が集まるようになった。ただ、このEMP攻撃を扱った報道のほとんどが恐怖を煽るばかりで、なかにはまったくリアリティが感じられないものもある。

日本でもこのEMP攻撃の研究にすでに税金が投入されている。防衛省は軍事技術の取得を目指す「防衛技術戦略」の一環として、2018年度軍事費の概算要求でEMP攻撃の研究費として14億円を計上。またEMPからの防御についても研究は始まっており、ある防衛省関係者は、「防衛省はすでに電磁パルスからシステムを防護する技術を開発するべく研究を行っていますが、目処がつくのに早くともまだ5年はかかる」と言う。

 

一方で、米国では電磁パルス攻撃に懐疑的な見方も少なくない。特に防衛関係者の間でそれは顕著だ。私は以前、米空軍の研究者との雑談の中で、「核兵器による電磁パルス攻撃の効果については様々な議論がある。ただ議会で対策を促すような動きはあるけれど、基本的に差し迫った懸念だとみなされていないのではないか」と聞いたことがある。

もちろん軍事技術の研究は必要だろうが、日本ではEMPの脅威論が一人歩きしているように感じる。そこで、電磁パルス攻撃が1960年代から研究対象になっている米国で、EMP攻撃についてどのような「懐疑論」が出ているかを紹介・検証してみたい。

そんな回りくどいことをするのか?

そもそもEMPとはどういうものなのか。EMPとは、高度数十~数百キロの大気圏で核爆発などを起こすことで発生する電磁波だ。その結果、電磁パルスが地上に波及し、大規模な停電や、電力を使う機器、交通網、通信といったインフラを壊滅させるという。電子デバイスの無力化は、インフラだけでなく、自衛隊など国の防衛システムにも影響を与えかねない。

強力な電磁パルスが発生すれば、電子機器などに損傷を与えることは間違いない。2004年には、北朝鮮にミサイルや核開発の技術協力していたロシア人科学者からEMP技術が漏えいしたと、CIA(中央情報局)のジェイムズ・ウルジー元長官が暴露している。それが事実であれば、北朝鮮がEMPを研究してきた可能性はある。

ただ米国では「EMPが脅威ではない」と主張する専門家たちがいる。

まず、戦略上の観点から、「わざわざ北朝鮮がEMP攻撃などというまどろっこしい攻撃を仕掛けてくるはずがない」というものだ。

「有名シンクタンク「戦略・国際問題研究所(CSIS)」で戦略的テクノロジーの研究をする上席副理事のジェームズ・アンドリュー・ルイス氏は、EMPに懐疑的な専門家のひとりだ。ルイス氏は、「EMP攻撃に反応するヒステリーは極めて過剰だ」と、米有力メディアのクリスチャン・サイエンスモニターの取材に指摘している。

ルイス氏は、米軍のアドバイザーや国連の政府専門家会合の調査委員を務め、通常兵器や技術の輸出などを管理する「ワッセナー・アレンジメント」の米国代表団を率いたこともある。核兵器やサイバーセキュリティにも精通する兵器テクノロジーや政策の分野の専門家だ。

ルイス氏はそもそも、戦略的に考えて、北朝鮮がEMP攻撃を仕掛ける理由がない、としてこう語っている。

「北朝鮮が核兵器を手にし、米国の上空で爆破させるなら、その後は何が起きるのか? 答えは簡単だ。米国の反撃で、大量の核兵器が(北朝鮮国内に)落ちてくることになる。ならば、なぜEMP攻撃などという無駄なことをするのか。核兵器を私たちに向けて発射するなら、EMP攻撃という、時間の無駄ともいえる攻撃はしないでしょう」

つまり、核兵器を発射した時点ですでに報復となる核兵器の嵐が降り注ぐことになるのに、何のためにEMP攻撃をするのか、という疑問を投げかけているのだ。狙うなら、都市部の機能の麻痺という遠回りなものではなく、基地あるいは行政機関を直接攻撃して、反撃機能を麻痺させることを優先するだろう、ということだ。