写真:大河内 禎/ヘア&メイク:大島知佳
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阿川佐和子さん「63歳のおとな婚」はこんなに魅力的!

運命論的に受け止めれば、心が楽になる

チャーミングで、時にピリリと辛口な発言が魅力的なエッセイストの阿川佐和子さん。当意即妙なコメント、軽妙なエッセイ、極上の言葉を相手から引き出す対話力……。その磨かれたコミュニケーション能力は、まさに「おとな」の鑑。自身の核を形成した10代のエピソードから現在の暮らしで感じていることまで、アガワ流「おとな」の条件を伺いました。

 

いまだに「落ち着け」といわれる

「おとなになったらあたふたしないというのは、嘘です。私の場合、いまだによく、『落ち着け』と言われます」

インタビューの場に現れた阿川さんは、あたふたではないものの、相手を和ませる可憐な笑顔とは裏腹に、行動はテキパキ、話しぶりはサバサバと、頭の回転の速さが窺い知れる。魅力的な人のつねとして、親しみやすさと凛とした聡明さなど、相反する2つの要素が同居しているようだ。

傍目に見れば、阿川さんの50代は華々しい。冠番組の『サワコの朝』をスタートし、170万部を超えたベストセラー『聞く力』を上梓。ゴルフという新しい趣味を始めたのも51歳。

「そうでしたか……、どうもすみません(苦笑)。たまたま重なったんですね。ゴルフは自覚してます。51歳の誕生日の1週間後に始めたんですが、これはやって良かった。

何が面白いって、“小学1年生”になれるんですよ。自分の息子のような年齢のゴルフ仲間に、『阿川さん、ダメだよ。頭が上がってるから』と言われたり。『えっ! どうすればいいんですか』『どこでボールを買えばいいんですか』と、何もわからない幼児みたいなものです。でもそれが、楽しいんです」

“五十一の手習い”を始めた悲喜劇、ゴルフによって周りの景色が変わったという逸話は、阿川さんの最新刊『バブルノタシナミ』に詳しいが、50歳を過ぎて新しいスポーツを始めた人生の先達の存在は、私たちにとって大いなる励みである。

「ただ、私の50代と今の50代とでは、環境が変わってますよね。例えば、今はネット時代の問題がある。メールやLINEに返事書かなきゃ、インスタグラムに写真出さなきゃなど、いつも急かされている感じがあるでしょ。

ネットのおかげで会社のしがらみも、圧倒的に強くなっているみたいですし。自分の年齢以前に、周りとの関係性がきつくなっていて『ちょっと待ってくれる?』みたいなことができない。その状態が続けば、肉体的にも精神的にもまいっちゃう人が多くなりますよね」

ブログなどに、自分の個人情報が特定されるような話を無防備に書く風潮には、危うさを感じるとも。

「マインドフルネスについて、脳科学者の茂木健一郎さんをインタビューしたんです。つまりは瞑想や座禅で、自分だけの世界で静かな時間を過ごすことが、この世知辛い世の中には大事だと。しかも今や、あのグーグルすら社員に向かって、『今こそ自分の内部の検索をしなさい』と言ってるらしいんです。

ネットで得た情報量の多い人間が偉い、幸せだと謳ってきた会社が、そんなことを言うとはねぇ。みんな、疲れてきちゃったんでしょうね」

極端に行き過ぎると、何かしらの揺り戻しが起きてくる。そのバランスを自分で取りながら生きる力こそ、今の時代には必要なのではないか。

「“振り子”だと思うんです。振り切ってしまえば、きついし、それ以上は行けなくなって、逆方向に戻り始める。進み過ぎれば懐古に戻るという具合に。ブームってそういうものですよね。それをある程度見越して、『面白いね』と楽しみつつ、『行き過ぎたかな』と戻す。自分でうまくコントロールし、調整できるようになることが、大事なんじゃないでしょうか」