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企業・経営 経済・財政 週刊現代

すべて実名!ニッポンのために金を使う「志の高いカネ持ち」80人

バンバン使う、それが正解だ 

カネを儲けて何が悪い――かつてそう嘯いた投資家がいた。何も悪くはない。堂々と儲けて大いに使えばいい、社会のために。実践する資産家はこんなにもいる。彼らが日本の未来を明るく照らす。

カネを溜め込んでも仕方がない

建設資材製造販売の山一興産社長の柳井光子氏(78歳)は来るべき超高齢化社会に向けて、少しでも一助になればと私財を投じた。

「いま盛んなビジネスはファンドなどで人のおカネを集めて投資をするような、人のふんどしで相撲をとって、カネ儲けしている人が多い。

しかも儲けても分配は少ない。おカネを溜め込んでどうするんでしょうね。死んだらおカネはもっていけない。人は裸で死ぬんですよ。一歩間違えれば、明日どうなっているかなんて、わからないじゃないですか。

私は父親を36歳の時に、母親を46歳の時に亡くしています。そのために親孝行できなかったことをずっと心残りに思ってきました。と同時に、今の社会には高齢になっても施設に入れない方が大勢いることも知りました。そこで、老人ホームの経営が私の生涯の仕事になると思ったんです」

柳内氏は'98年に茨城県潮来市に特別養護老人ホーム『福楽園』を開設。資金として私財10億5000万円を注ぎ込んだという。その後、都内と千葉県内にも特養を作り、13ヵ所の特養を含め20ヵ所の施設で福祉事業を行っている。

「いずれも社会貢献のための事業ですから会社の利益にはなりません。儲けは本業で出せばいい。社会貢献の分野で儲けてはいけないと思っているんです」(柳内氏)

 

名古屋で産業用ロボットなど自動生産設備の専門商社を営むダイドーの山田貞夫氏は父親の零細企業を年商1000億円に成長させた、名古屋財界の立志伝中の人物だ。

「私が入社したとき、社員は親父を入れてわずか3人でした。機械部品の加工と販売を手がけていましたが、自転車とリヤカーで商品を運ぶ、まさに零細企業です。

これでは未来がないと思い、当時最新鋭だったベアリングに目をつけ、販売会社を立ち上げて裸一貫からスタートしたのです。

ここまで大きくなれたのも、自分より取引相手を優先するというモットーを貫くことができたからだと思います。私自身は贅沢をしませんし、無駄なものはまったく買いません。社用車もなく、営業先は営業マンの車に同乗して回ります」

そんな山田氏の唯一の趣味がクラシック音楽なのだという。

「小学校5年生の時、おふくろが亡くなりました。私は長男でしたから、弟や妹の面倒も見なければなりません。遊ぶヒマもなかったときに出会ったのが、ベートーヴェンの交響曲第3番変ホ長調『エロイカ』です。

今まで聴いたことがない壮大な音楽に圧倒され、聴いている間だけは日々の苦労を忘れることができた。その後は本気で指揮者になりたいと思ったこともありますが、うちが貧乏ですから到底実現できません。

そのこと自体に後悔はありませんが、才能のある若者に私と同じ思いをしてほしくはない。いつか何かの形で音楽に恩返しできないか。そんな思いをずっと持ち続けてきました」

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事業が安定してきた'94年から山田氏はクラシックコンサートをチャリティで毎年開催し、来年に記念すべき25回目を迎える。'12年には「山田貞夫音楽財団」を設立。個人で所有していたダイドーの株式40億円分を寄付した。

「実はチャリティコンサートで、1曲だけタクトを振らせてもらっています。演奏者の皆さんにはご迷惑をおかけしているとは思いますが、私の唯一のわがままとお許しいただいていますし、演奏中に様々なパフォーマンスを披露するので観客の方にも意外と好評なんですよ。

昨年3月には名古屋駅近くに『ダイドーロボット館』というロボットに関する情報を提供する施設も作りました。人口減少が進む日本で人手不足に対応するために、誰かが啓蒙しないとロボットは普及しません。

だったら我々が、ということで始めました。年間3億円の赤字です。おそらく上場している会社ではできないことだと思います」