北朝鮮

元経済ヤクザだからわかる、北朝鮮「過剰な挑発」の真意

アメリカが沈黙するのが怖いから
猫組長 プロフィール

これがクライシスの正体

第三諸国に核爆弾を流出させれば世界中から非難され、激しい経済制裁を受けるのだが、これに耐えられるのも、これ以上ないほど強い経済制裁をすでに受けている北朝鮮ただ一カ国。

イランを始めとして「核」が欲しい国はたくさんある中で、核マーケットは北朝鮮が独占しているのだから、核実験はミサイルとは違う面でのショーケースと言えるだろう。イランは産油国であり、北朝鮮への油の供給源となりうることはあえて付記しておきたい。

第13代FRB(連邦準備制度理事会)議長のグリーンスパン氏は回顧録に「イラク戦争は、主として石油の為であった」と書いて大騒ぎになったことがある。

当時、フランスはイラクに「石油決算をユーロで行えば条件を有利に取引することと、武器を供給すること」を持ち掛けた。石油と武器のドル支配を崩したくなかったことがアメリカがイラク戦争に向かった動機の一つである。

 

しかしこのまま北朝鮮を看過すれば、アメリカの武力神話が崩壊し、それはドルの威信に傷をつける事態になりかねない。それでもアメリカが北朝鮮の暴挙を看過してきたのは「統一資金」の問題がああるからだ。

09年、ドイツの主要4経済研究所の一つ、ハレ経済研究所は、東西ドイツ統一にあたって1兆3000億ユーロ(現在のレートで、約170兆円)もかかったと発表した。

11年には韓国統一省が、南北統一に必要な費用について「30年に統一すると事前に約53兆円、事後に約184兆円かかる」とした。

ドイツは統一の経済的インパクトに耐えられたが、実に237兆円もの天文学的数字に韓国が耐えることはできない。その尻ぬぐいをさせられるのは、アメリカだ。ババを引きたくないアメリカとしては、北朝鮮を崩壊させる形の南北統一は避けたいのだ。

さて、独立系の小さな組織が大組織と渡り合って生き残ることがヤクザの世界でもあるのだが、この時、独立系の組織は他組織の動きを見ながら巨大組織と戦うのが常である。

この状況での別組織とは、北朝鮮がアクションを起こすたびに非難めいた声明を出す中国・ロシアだが、両国ともに世界で存在感を示せるのは北朝鮮をコントロールできるということだから、おとなしいよりは少々暴れてくれた方が助かることを忘れてはいけない。暴れる舎弟を「まぁまぁ待てや、そのへんにしとけや」と言ってなだめるようなものなのだ。

こうした状況を北朝鮮もわかっていて、実際に空爆されないギリギリの線を探りながら、ミサイルと核実験で営業活動をしている。それが朝鮮半島クライシスの正体なのである。

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