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米・科学論文が示唆する「原発事故後の再汚染」の懸念

サンプル調査の結果が公表された

福島第一原発事故から5年が経過した昨年2月、原子炉専門家のアーニー・ガンダ
ーセン氏は福島を訪ねて、様々な場所の土壌やダストを採取し、汚染状況を調査した。

その結果、福島で、再汚染が起きている状況を発見したことは、昨年6月の拙記事で
紹介したところだ(「フクシマではいま、再汚染が起きている可能性がある」米国原子力研究家の警告 http://gendai.ismedia.jp/articles/-/48323)。

この記事では、具体的な放射線数値については「調査のための時間が必要」ということで言及できなかったが、7月、ガンダーセン氏は、ともに調査にあたっているウースター工科大学のマルコ・カルトフェン博士と連名で「Science of The Total Environment」誌に科学論文を発表、その数値を公開した(http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0048969717317953)。

この数値を見れば福島周辺の再汚染が進行していることが疑われるという。ここに、その内容を紹介しよう。

「状況改善を願っていたが…」

ガンダーセン氏とカルトフェン氏は、日本の科学者やボランティアたちとともに、2011年の原発事故の翌日から、サンプルの収集を実施。また2016年にも来日し、再びサンプルの収集を行った。

 

サンプルは、道路脇の土壌の他、車のフィルター、掃除機、風呂場の換気扇など人々の生活空間から採取したダストが中心。そうしたダストは、人々が日頃吸引しているほこりやちりと同じであると考えられるからだ。2人は2011年に78個、2016年に102個の計180個のサンプルを採取し、これらが調査された。

「原発事故から5年を経て、我々は、汚染状況が改善されていることを願っていました。しかしながら調査結果をみるかぎり、依然として高放射性粒子が多数存在し、2011年と2016年とでは汚染状況があまり変わっていないことがわかりました」

ガンダーセン氏はこう指摘する。

具体的な数値を紹介しよう。日本で採取した180のサンプルの放射性セシウムの中央値は約3200bq/kg、平均値は約26000bq/kgである。

平均値とは全サンプルの合計の数値を総サンプル数の180で割った数であり、中央値とは180のサンプルを並べた場合に中央に来る数値のことである。比較上、同時期に、カナダと米西海岸でもサンプルが採取されたが、その中央値は30bq/kg以下だった。

実際にサンプルを計測したカルトフェン教授が解説する。

「アメリカのサンプルの中には日本由来の放射性セシウムが含まれているものもあったのですが、チェルノブイリを除けば、世界の多くの地域での放射性セシウムの数値は30bq/kg以下と推測されます」

つまり、3200bq/kgというのは、世界の多くの地域の100倍以上の数値なのだ。さらに、カルトフェン氏は続ける。

「3200bq/kgという数値は癌になるリスクを上げる可能性があります。特に、平均値である26000bq/kg以上の放射線にさらされた人のリスクを上げるでしょう」

ガンダーセン氏は、平均値と中央値を比較してこう説明する。

「平均値が中央値の約8倍もあるのです。つまり、それだけ、高い数値の放射性粒子が存在しているということになります。

IAEAは放射線の数値については中央値にしか注目していませんが、実際は、高い数値の放射性粒子があることがわかったのです。これは非常に危険なことです。食べ物や呼吸を通して、健康に影響を与える可能性があるからです」