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アメリカ 映画

たいてい主人公が壮絶に死ぬアメリカン・ニューシネマとは何だったか

1970年代の若者と空気【1】

1970年前後に若者だった世代は、いま(2017年)60代後半になっている。彼らが若かりし頃に夢中になっていた「アメリカン・ニューシネマ」を読み解くことで、当時の空気を浮かび上がらせ、それが現代日本とどうつながっているのかを考えてみよう。堀井憲一郎さんによる特別コラム全3回を一挙公開!

「ニュー」だった「シネマ」

懐かしき 俺たちのアメリカン・ニューシネマ』という本が出ていた。

そこそこ新しい本である。2017年4月刊行。芸文社。

サブタイトルが「青春を駆け抜けた名作が今蘇る」で、わかりやすく老人向けである。

1960年代後半から1970年代当時の「ニュー」だった「シネマ」が紹介されている。

懐かしの名作、『イージーライダー』『ウッドストック/愛と平和と音楽の三日間』『いちご白書』から始まって三十数本の映画が載っている。

俺たちのアメリカン・ニューシネマ

ただ、かなり幅広く拾われている。1970年代後半の『タクシードライバー』(1976)『ディアハンター』(1978)『地獄の黙示録』(1979)まで入っていた。私の印象と違っていて、そこまでニューシネマというのか、と少し驚いた。

この本の「はじめに」でも「アメリカン・ニューシネマに定義というものは存在しない」と断ってある。

具体的にどの作品が該当するか、とか、なにをもって「アメリカン・ニューシネマ」であるか、とか定義はなく、個人の解釈しだいである

そのへんの個人の勝手、自由であるところが、あの時代を反映しているとおもう。

 

1970年は、若々しく新しい時代を予感させた

私の個人的な「ニューシネマ」のイメージは、アメリカがベトナムで戦争をしていたときに作られていた映画、である。

どこまでも個人的な捉え方でしかないのだが、アメリカでもそして日本でも反戦運動がしきりにおこなわれていたころに作られた、新しく瑞々しい映画をそう呼ぶのだとおもっている。

1960年代の終わりころから、1970年そこそこまでの期間、学生運動が激しかったころの作品である。若者文化が大きく取り沙汰されていた時代、その心情を反映した映画が、何やら新しく感じられていたのだ。

私は1970年に中学に入った。

中学に入るとそれまでとは少し世界が違って見えるのだが、同時に時代も1970年代という新しいタームに突入して、世間もわくわくしているように感じた。

希望と不安に満ちた1970年は、若々しく新しい時代を予感させたのだ。

その時代の空気とアメリカの新しい映画群はとてもマッチしていた。自分たちの時代が始まったのではないかと、感じさせるものがあった。その具体的な気分をおもいだしてみる。

1970年代の最初には瑞々しく感じた〝若者の時代〟の空気は、1970年代の後半には沈潜してしまい、やがて文化の表面から消えていった。若々しい若者文化という概念そのものが見向きもされなくなる。

しかしそれは、ただ消えたわけでなく、伏流のように文化の底を流れ続け、ふたたび21世紀になって違う形として日本の文化に関わってきてるようにおもう。

1970年の気分を振り返るのは、現在のおおもとを見つめるためでもある。