ハリー・ハリス太平洋軍司令官(中央)〔PHOTO〕gettyimages
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在日米軍より強大「太平洋軍」の役割と任務を知っていますか

9つの統合軍のうち最大規模

太平洋軍とハワイ

2014年12月、ハワイで開かれた大きな会議の際、ハリー・ハリス太平洋艦隊司令官(当時)に挨拶する機会を得た。差し出した私の名刺を見てハリス司令官は「おー、日本からですかー」と日本語で答え、人なつっこい笑顔を浮かべた。

太平洋艦隊は、太平洋軍を構成する軍のひとつで、ハリス太平洋艦隊司令官はまもなく、上位の太平洋軍司令官になることが予定されていた。

太平洋軍も太平洋艦隊も、司令部は米国ハワイ州のオアフ島に置かれている。太平洋軍の下には太平洋艦隊の他にも、太平洋陸軍、太平洋空軍、太平洋海兵隊があり、それらの司令部もオアフ島に揃っている。

第二次世界大戦時の文部省推薦の長編アニメ映画『桃太郎の海鷲』では「ハワイこそ! 悪鬼米英根據地鬼ヶ島ではないか!」と憎まれたハワイだが、戦後の日本人にとっては南国の楽園であり、ハネムーンや観光の行き先として人気を博してきた。

しかし、そもそも日本の帝国海軍がオアフ島の真珠湾を攻撃したのは、そこが米国の一大軍事拠点だったからであり、今でもそれは変わらない。太平洋艦隊の司令部は現在も真珠湾に置かれている。そして、太平洋軍の司令部はそこから少し離れた丘の上のキャンプ・スミスに置かれている。

ハワイは南国の楽園であると同時に、米軍の一大拠点というもう一つの顔を持っている。太平洋軍は実に37万7800人の要員を有している。自衛隊員の数が陸、海、空を合わせて22万人あまりだから、一国に匹敵する規模を太平洋軍は持っていることになる。

 

九つの統合軍

米軍の統合軍は全部で九つある。

それぞれに司令官がおり、作戦上は、大統領、そして国防長官に次ぐ地位になる。大統領は米軍の最高司令官であり、それを国防長官が支える。

統合参謀本部は、米国においては作戦上の指揮権を持っていない。米国の統合参謀本部は大統領と国防長官に助言をする立場である。

デニス・ブレア元太平洋軍司令官は、筆者のインタビューに対し、自分を動かすことができるのは大統領と国防長官だけであったと答えている。それだけ大きな権限が統合軍の司令官には与えられる。

米軍といえば、陸軍、海軍、空軍、海兵隊というのが普通のイメージであり、実際にそうなのだが、戦闘においてはそれぞれが独自に作戦を行うわけではない。各軍が必要に応じて連携し、統合作戦を担わなくてはならない。それを担うのが統合軍である。

九つの統合軍のうち、六つが地域別になっており、三つが機能別になっている。機能別の統合軍は、戦略軍、特殊作戦軍、輸送軍である。戦略軍は核兵器やミサイル、そして宇宙を管轄し、隷下にはサイバー軍も有している。特殊作戦軍は文字通り特殊作戦を担う。輸送軍は米軍の人員・物資を輸送することを専門にしている。

地域別の統合軍は、北米を管轄する北方軍、中南米を担当する南方軍、中東を担当する中央軍、アフリカを担当するアフリカ軍、欧州を担当する欧州軍、そして太平洋軍である。

こうした地域分割は国連その他の機関によって米軍に委任されているものではなく、いわば勝手に米国政府が世界を分割し、それぞれの地域における米国の権益を守るために軍を置いていることになる。

太平洋軍は九つの統合軍のうちで最大規模であり、地球の表面積で見ても52%という広大な地域を担当する。米国西海岸の映画産業の拠点ハリウッドから、インドの映画産業の拠点ボリウッドまで、北極熊から南極ペンギンまでが担当地域だとハリス司令官はいう。