格差・貧困 アメリカ

南軍旗を巡って殺し合い…日々深刻になるアメリカの「内戦状態」

もう誰にも止められない
川崎 大助 プロフィール

ヒルビリーの出身地や「現住所」と南部連合諸州、あるいは南軍とは、イメージ的に重ね合わされることが多い。もちろん完全に合致するわけではないし、そもそも、ヒルビリーだって引っ越しもする。進学のためでなくとも、職を求めて移動することもある。ゆえに『ヒルビリー・エレジー』の著者、J.D. ヴァンスが生まれ育ったのは北軍側のオハイオ州だった(一族の出身地であるケンタッキーはすぐ隣の境界州だ)。

赤線部分がオハイオ州だ(google map より)

あくまで一般的に「カリカチュア」されたヒルビリー、レッドネック像が、メディア上で「南軍」と結びつけられていることが多いわけだ。

とはいえそれが、マーケティング的にもおそろしく機能することの証左が、『デューク』のヒットだった。いまもなお、現役のファンが数多くいるのだから。

アメリカにおいて『デューク』は過去のものではない。同番組はレギュラー・シーズン終了後も人気は衰えず、その後、各種スピンオフはもちろん、21世紀に入ってからは映画版が何度も製作された。

また、そもそもオリジナル・シリーズが、アメリカではいまもなお、カントリー音楽チャンネルやローカル・ケーブル局などで、繰り返しずっと再放送され続けている……要するに、いつも「デューク」はそこにいる。ちょっとヒルビリーな人々の、すぐ隣に。

Photo by gettyimages

だから、こういうことが言える。『爆発! デューク』の再放送をビール片手に楽しんでいる人たちにとっては、「いまもなお」リー将軍号は輝ける自由と冒険、男らしさの結晶なのだ。「これまでもずっと」そうだった……。

ヒルビリーは「二度、負けた」

南軍に関係するものなんて、すべてけがらわしいに決まっている! というわけではなかった、という一例として、僕はこのエピソードを書いた。「なかった」と書いたのは、すでに状況は変わってしまったからだ。

 

2015年、ついにリー将軍号にも「政治的妥当性」のメスが入る。問題視されたのは、その名前ではなく「ルーフ」だった。

リー将軍号のルーフには、もちろん、当たり前のように「南軍旗」がペイントされていたからだ。「Confederate Battle Flag(南部連合の戦闘旗)」あるいは別名「Rebel Flag(叛旗)」と呼ばれるこの旗を「撤去しろ」との声が上がったのだ。

南軍旗もまた、人種差別と奴隷制容認の象徴として、公の場から排除され続けていた。この動きが一気に加速したのは、15年の6月、サウスキャロライナ州チャールストンの黒人教会を白人至上主義者の男が襲撃し、銃によって9人を殺害した事件が起きたからだ。

犯人のディラン・ルーフは、事件前から差別的な主張をおこない、そして「南軍旗とともに」自らを撮った写真をウェブサイトにアップしていた。

犯人のディラン・ルーフ(Photo by gettyimages)

リー将軍号の「旗取り」は、まずは玩具から手をつけられることになった。人気番組の象徴なのだから、多くのミニカーやトイカーが発売されていたのだが、権利を有するワーナー・ブラザーズは、すべて発売停止とすることを宣言した。

これには同番組のファンから轟々たる非難が巻き起こったのだが、決定はひるがえらなかった。ヒルビリーは、負け犬白人は、またここで「負けた」