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いわゆる「幸せな結婚」をして家庭に入ったのに浮気癖が止まらない女

A子ちゃんとB美ちゃんの複雑な感情②
鈴木 涼美 プロフィール

下の名前で呼ばれたくてしょうがないだけ

承認欲求系ヤリマンには2種類いて、片方はヤリマンとモテ、セックスと愛を見紛って、過剰に自信に溢れているタイプ。もう片方は誰といても満たされず、かといって誰かといないともっと満たされず、恋やセックスを貪るように食べるタイプ。当然、前者は無自覚で後者は自覚的であり、前者の幸福感はとても高く、後者のそれは絶望的に低い。頭の良い彼女は当然後者だった。

「理由はわかってる。自分に何もないから結婚して旦那の傘の下に入って生きていくことはできるようになったけど、誰々の奥さん、誰々ちゃんのママとしか認識されなくて、下の名前で呼ばれたくてしょうがないだけなんだと思う。

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あんたみたいに色々持ってないし、社会に自分の場所なんてないし、それは自分が選んだ道だけど、でも恋してキュンキュンしてる間は幸福な気もしちゃうから、毎回舞い上がって家に帰って自己嫌悪」

恋してやるべきことを逃すとか、好きな男のために授業をサボるとか、失恋して仕事に身が入らない、なんていうことはみんな10代20代で経験しているが、子供をないがしろにして男とデートした後の彼女の自己嫌悪がお茶して話した程度では解消されず、解消されないからまた恋に走るのもなんとなくわかった。

「でもこれ、その彼がアメリカ出張で買ってきてくれたやつ可愛くない?」

と見せられた、おそらく家庭内では外しているであろうティファニーの時計は、残酷なことに彼女のかつてつけていたどのアクセサリーよりも彼女に似合っていた。

 

結局、2歳にならない娘を抱えた彼女が、男に結婚や子持ちを隠し通せるはずもなく、程なくして一番大切だった恋は終わった。もう片方のヒゲアート男も、外銀男と会わなくなったタイミングで縁が切れたらしい。

現在の彼女は、デート服をスーツに着替え、内緒のティファニーをペンに持ち替えて、資格勉強をしながら多ジャンルの教室に通い、やはり若干旦那と子供をないがしろにしてまでキラキラとした社会人を謳歌している。

企業に入って働くことは、それなりに良い側面もある。焦って不倫したり気象予報士の資格を取らなくとも、山手線に揺られるスーツ陣たちの多くが、案外社会に確固たる自分の居場所など持っていないし、自分が何者かであるかもしれないという期待など、新人研修が終わって1週間で生ゴミと一緒に捨てていることがわかるからだ。

〈次回に続く〉

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