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いわゆる「幸せな結婚」をして家庭に入ったのに浮気癖が止まらない女

A子ちゃんとB美ちゃんの複雑な感情②

元日本経済新聞記者にして元AV女優の作家・鈴木涼美さんが、現代社会を生きる女性たちのありとあらゆる対立構造を、「Aサイド」「Bサイド」の前後編で浮き彫りにしていく本連載。今回は、第1試合は「ママ」対決のBサイド。大学卒業後、就職せずそのまま結婚し、家庭に入った一見幸せそうな専業主婦の複雑な感情を紐解いていきます。

*第1試合Aサイド「キャリアママの複雑な感情」原稿はこちら(http://gendai.ismedia.jp/articles/-/52773

黄金比率的美人じゃないからモテる?

スタイルがよく美人である、というのが彼女の最もわかりやすい価値だった。

もちろん、私を含めたごく少数の仲の良い友人たちはもっと他の魅力、詩的な表現が巧みであるとか、料理が上手だとか、音楽の趣味がいいとか、そういうことを知っていたが、それでも私たちも人に彼女を説明する時に、モデルみたいな美人でね、と切り出す。そして彼女も、ただの美人ではないという自意識を持ちながら、美人だということが自身にとって大変重要だということは否定せずに自覚していた。

そして別に女を売るとか男性に媚びるとかいう次元ではなく、その価値を存分に発揮して10代を過ごし、20代を過ごし、27で婚活結婚するまで必死に働くことも必死にダイエットすることもなく平穏な日々を送っていた。

 

私は今でも、高校1年生の5月の彼女が載った高校生向けファッション誌を持っている。高校に入って夏休みあたりですっかり垢抜ける女子が多い中、入学式での彼女のずば抜けた都会っぽさと大人っぽさは、当然クラスのほとんどの男子に意識されるという結果に帰結し、すぐに隣のクラスの学年で一番金持ちでイケメンの彼氏と付き合って別れて他校の3年生や渋谷のフリーターなどとも付き合っていた。

大学選びもソツがなく、嫌味すぎないけどバカにされることはないミッション系の有名大学の法学部に入学し、当然司法試験の勉強などにも手を染めず、ジャガーに乗った彼氏と熊本の高級温泉に3泊で行ったり、読者モデルとして自慢のエルメスコレクションを全国的に公表したりしていた。

大学を卒業するときに就職しなかった彼女を、悲観的に見る人も少なかった。港区の実家から何処へでも出かけられたし、探せばそれなりの働き口があるであろうことは誰にでも想像できたし、何よりわざわざ仕事人としてのキャリアを上書きしなくても、美しい彼女は十分に社会に受け入れられていた。

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「私がモテるのって、黄金比率的な美人じゃないからだと思う」という彼女の言葉はおそらく本心だし、言われてみれば黄金率的な顔ではないような気がしたが、彼女がモテるのは別の理由によるものだと私は思っていた。

彼女は自分が好きな服と男が好きな服の区別がよくわかっていた。自分の好きなメイクと一般的な好みの差を誰より心得ていた。心地の良い立ち振る舞いと美しい立ち振る舞いが必ずしも一致しないのを知り、また男が頼られるのを好きなことも、しかし同時に情けない側面も愛して欲しいと思っていることもよく理解した。