第3段階:入社後の業務評価

以上のような選考プロセスを経て、めでたく入社すると、今度は彼ら従業員(社員)のパフォーマンスを定量的に測定(評価)するAIが待ち受けている。

たとえば「Veriato」というソフトは、従業員たちが普段、業務用パソコンを使って何をしているか、その全ログを蓄積して詳細に分析する。分析対象には「ウエブ・ブラウザによる閲覧履歴」「メールやチャットの中身」「キーボード入力の記録」「閲覧・編集した文書」、さらには「各種アプリの使用履歴」など、広範囲のデータが含まれる。

これだけであれば、いわゆる「社員監視ソフト」の一種ともみなされるが、Veriatoでは社員全員のログをAIが解析することにより、この会社の業務遂行に必要とされるベースライン(基礎能力)を算出する。これを各社員のパフォーマンスと比較することにより、個々の社員が各種業務において、どの程度、ベースラインを上回る、あるいは下回っているか等を判定する。

VeriatoのようなAIはまた、機械学習とパターン認識に基づく異常検知機能を備えているため、従業員による情報漏洩や逸脱行為などを早期発見できるとされる。

また彼らがやり取りするメールの内容をAIで解析することにより、普段の仕事や上司、同僚らに対する不満などをいち早く検知し、彼らが近々退社したり、情報を社外に漏洩したりする危険性(確率)なども算出する。

注意点:評価プロセスがブラックボックス

ただし、この種のAIはいわゆる「ブラックボックス化」と呼ばれる問題も抱えている。AI内部の仕組みが外部からは見えないブラックボックスであるため、AIが各社員に下した評価、あるいは彼らが何らかの過ちや悪事を犯す危険性などは算出されても、なぜそのように評価あるいは判定したのか、その理由をAIは人間に教えてくれない。

つまり個々の従業員は、単なるパターン認識に基づく評価結果や予想を受け入れるしかない。これは(既に入社した)従業員の業務評価のみならず、それに先立つ採用プロセスについても共通する現象だ。仮に、こうしたAIが今後、日本でも人事の現場へと闇雲に導入された場合、それはビジネス社会全体に深刻なモラル・ハザードを引き起こす恐れがある。

企業の人事部、あるいは各業務の現場で人事考課に当たる管理職の人たちは「AIはあくまでも(人材評価用の)ツールに過ぎない」という意識を念頭に置いたうえで、そうしたAIで節約された時間や労力を有効に使って、より正確・公平な人材採用や人事考課を心がける必要があるだろう。