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「空襲から逃げたら食糧停止」エリート官僚が発した恐るべき命令

防空法が招いた悲劇
大前 治 プロフィール

「避難せよ」と呼びかけた街

他方、こうした戦時体制下でも、政府方針に反して「空襲が予想されるから逃げろ」と命じた地方官吏がいた。

同じ青森県の八戸市では米軍が「8月17日に空襲をする」という予告ビラを散布したので、山内亮市長が8月10日付で「市街地からの総退去」を命じた。新潟県の畠田昌福知事は広島への原爆投下の報を受け、内務省と対立しながらも8月10日付で「新潟市民の急速なる徹底的人員疎開」を指示した(後掲の拙著200ページ参照)。

国民も公務員も、政府方針に逆らえない重圧を受けていた。その時代にあってもギリギリのところで良心を守った役人がいたことを記憶したい。

政治家や公務員だけではない。すべての国民が戦争体制に組み込まれた時代に、一人ひとりがどう生きたのか、どう生きるべきだったかも問われなければならない。

それは、今を生きる私たち自身への問いでもある。

 

知らず知らずのうちに日常生活に戦争の影が忍び寄るのを見過ごしていないか。空気を読んで順応することにより、政府が進める戦争準備に加担していないか。たとえ遅きに失しても、間違いに気づいたときには勇気をもって抗うことができるだろうか。

特定秘密保護法、集団的自衛権、共謀罪と、相次ぐ法令や閣議決定により国のかたちが変えられていき、さらに憲法改正への動きが強まっている。それを推進している政治家が、過去を学び教訓にしているようには思えない。72年前と同じ失敗を繰り返すことは許されない。

「戦争体験者が知らなかったこと、語れなかったこと」を掘り起こし、200点以上の写真・ポスター・図版を掲載した著書『逃げるな、火を消せ!―― 戦時下 トンデモ 防空法』をぜひ手に取っていただき、戦争のリアルさを感じ取っていただければ幸いである。