企業・経営 週刊現代

銀行が有名企業の「役員人事」に反対しまくっている

ドキュメント「議決権行使」
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日本の金融機関の多くはどこかの企業グループに所属しており、これまではグループ各社の株を大量に保有することで「安定株主」の役割を果たしてきた。それがここへきて、突如として「モノ言う株主」へと一変。身内にも牙を剥くようになっているわけだ。

金融庁・森長官の「号令」

実はそんな「突然変異」が今夏から続出し始めたのは、森信親長官率いる金融庁がトリガーを引いたのがきっかけ。金融庁関係者が明かす。

「金融庁はかねてより、信託銀行、運用会社、生保などの機関投資家が、系列企業の株主総会で身内の論理を優先させ、その議決に『手心』を加えているのではと問題視してきた。

実際、機関投資家が身内の大企業となれ合い、利益相反になっているケースもあった。

そこで金融庁内では昨年から抜本的に問題を改善すべく専門会議で議論を始め、機関投資家の行動指針を変えたのが今年3月のこと。そこで、これまで機関投資家は株主総会で各議案にどう投票したかについて大まかな集計を公表すればよかったところ、今後はすべて個別開示するように指針を改訂したのです」

もちろんそんなことになれば、これまでバレないからと「賛成票」を投じてきたことも丸裸になってしまう……。

事態を危惧した一部の機関投資家は「投資行動がばれる。株価にも影響が出る」と反発したが、強権で知られる森長官はそうした声に耳を貸さなかった。

「しかも、開示しない場合はその理由を説明すべきとし、むしろ開示を事実上義務付けた。観念した機関投資家たちは、『身内びいき』から一斉に引かざるを得なくなった」(前出・関係者)

 

かくして前述したように身内相手にも厳しい議決権行使をするケースが続出するようになったわけだが、企業役員たちを震撼させているのはそれだけが理由ではない。

実は、機関投資家たちは親密にしてきた「取引先」にも厳しい議決権行使を断行。昨日まで手を結びあっていたのが一転して、その役員人事にも次々と反対票を投じ始めているのだ。

「たとえば、野村アセットマネジメントは、同じグループの野村證券が主幹事を務める三菱自動車の株主総会で、益子修社長など5名の役員人事に反対票を投じています。

同じく野村證券の得意先である富士フイルムHDの株主総会でも、古森重隆会長、助野健児社長、経営企画部長という経営中枢の人事に反対票を投じている。

驚くのは、会社側が『反対』する議案にはむしろ、『賛成』を投じるような挑戦的な議決権行使もしていることです。

たとえば武田薬品工業の株主総会では、一般株主から『相談役や顧問の職を廃止せよ』との趣旨の株主提案が出され、会社側は反対しているのに、野村アセットマネジメントは賛成票を投じた。まさに『モノ言う株主』であり、会社側は否が応でも緊張感を持たざるを得なくなってきた」(経済ジャーナリストの片山修氏)