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企業・経営 週刊現代

銀行が有名企業の「役員人事」に反対しまくっている

ドキュメント「議決権行使」

株主総会で議案に賛否を投票する――その「議決権行使」をめぐって、今夏の株主総会で異変が勃発した。積み上がる反対、反対、反対の票……。身内も取引先も容赦しない。大株主が牙を剥き始めた。

トップ人事にもケチをつける

三菱グループで役員を務める幹部の一人は、今夏に一斉に開かれたグループ各社の株主総会の「結果」を眺めていた時、衝撃的な数字を見つけて驚愕した。

それは、グループの一角をなす三菱UFJリースの株主総会で、各取締役の人事についてどれくらいの賛成票、反対票が積み上がっていたかの詳細を記した資料に目を通していた時のこと。

株主総会における取締役人事への賛成率は、9割台が一般的。実際、今年の東芝の株主総会では綱川智社長の再任人事への賛成率は89%であり、9割を下回るのはよほどの事態とされる。

それが、三菱UFJリースの株主総会では9割台はおろか、複数の取締役が「8割台割れ」……。該当する3人の取締役の中には「7割台割れ」する者も出るほどの緊急事態になっていたため、思わず我が目を疑った。

「3人の賛成率は、69%、72%、79%という異常な低さ。昨年の株主総会では賛成率が8割を下回る取締役はいなかった。一体なにが起きているのか」

そのグループ幹部が訝っていたところ、さらにショッキングな事実を知ることになる。

というのも、この3人の役員人事に反対票を投じていたのは同社株を大量保有する機関投資家であることがわかったのだが、その当事者はなんと「身内」。

具体的には、三菱UFJリースの株式を2000万株以上保有する大株主で、しかも、同じ三菱グループである三菱UFJ信託銀行だったと判明したのである。

今回の三菱UFJリースの株主総会では新しい監査役の人事への賛否も決議事項になっていたのだが、なんと三菱UFJ信託はこの人事にも反対票を投じていたことがわかった。

「しかも、この新任監査役候補となっていたのは、三菱UFJ信託で執行役員を務めたことのある『身内中の身内』。驚きを超えて、恐怖すら感じた」(前出・グループ幹部)

 

株を持っている生保や銀行などの機関投資家が、よその大企業の役員人事に文句をつける。それが身内であっても、容赦はしない――。

実はいま、そんな前代未聞の事態があちこちの企業で勃発し、有名企業の役員たちを震撼させている。三井住友グループ幹部も言う。

「うちの場合、グループの中核的金融機関のひとつである三井住友信託銀行が、グループ各社の株主総会で次々と取締役人事に反対票を投じています。それもヒラの取締役レベルだけではなく、トップ人事にまで『NO』を突きつけているから驚きです。

実際、三井ホームの株主総会では市川俊英社長の再任人事に反対票を投じていた。IHIの株主総会にいたっては、斎藤保会長、満岡次郎社長のトップ2をはじめ合計10名の人事に反対し、もはや会社の経営そのものに事実上の不信任を突きつけているようなものです。

さらに、NECの株主総会では2010年から社長を務めた『重鎮』の遠藤信博会長の再任に反対したのみならず、グループの『大物』である三井住友フィナンシャルグループの國部毅社長を社外取締役に再任する人事にも反対票を投じた。

結果、遠藤氏の人事案への賛成率は82%、國部氏は71%という恥ずかしいほどの低位に沈んでおり、もう目も当てられない」