欧州宇宙機関が打ち上げた重力波宇宙望遠鏡LISA(Photo by Getty Images)
宇宙 重力波 ノーベル賞

祝ノーベル賞!重力波で人類は、13億年前まで見える目を手に入れた

エキサイティングに激変した宇宙観測

重力。もっとも弱く、謎に包まれていた力が、この宇宙に大きな影響を与えている。アインシュタインが重力波を予言してから100年。「最後の宿題」と言われた重力波の観測に成功したことで、ついに「重力波天文学」の時代が幕を開けた。

2017年のノーベル物理学賞が授与された「重力波」の観測に至るまでの、天文学の歩み。そして、ブラックホール、量子真空、ダークエネルギー、量子重力理論……。21世紀の私たちが宇宙を理解する上で欠かせなくなるこうした問題をやさしく解説しながら、宇宙誕生と進化の謎に迫った『重力波で見える宇宙のはじまり~「時空のゆがみ」から宇宙進化を探る』の著者で、欧州宇宙機関の重力波望遠鏡プロジェクトメンバーでもあるフランス人研究者ピエール・ビネトリュイ(Pierre Binetruy)氏の言葉に耳を傾けてみよう。

「夜空の向こう」には何が広がっているのか

まずは想像してみてください。

今は夏の夕暮れどき。月のない暗い空には無数の星が瞬いています。数分も経てば、銀河の乳白色の帯と、色さまざまな星座が見えてくるでしょう。そのうしろには、さらに遠くの星らしきものも、かすかに見えてきました。広大無辺の宇宙が、私たちの目の前に広がっているのです。

milkywayPhoto by iStock

偉大なる宇宙の景色を目の前にすれば誰でも、人間とはいかに卑小な存在か、宇宙の存続に比べれば、人間がこの世に留まる時間はごく一瞬にすぎないと、つくづく思うでしょう。

何世紀ものあいだ、詩人や哲学者や芸術家や作家が、この星に満ちた天空について夢想し、書き、議論を重ねてきました。そして人々はそれに応えて宇宙への興味を抱き、星空を観測するようになりました。すべてが語りつくされたようにも思われます。ところが――。

 

20世紀の物理学は私たちに、肉眼で見るよりはるかに豊かな宇宙が観測できることを示してくれました。しかも最近では、地上にいながらにして、宇宙のすばらしさを以前よりずっと身近に感じられるようになっています。

それは、巨大な天体望遠鏡などの、より強力な観測方法のおかげです。新しい観測方法によって、目に見える光だけでなく、別の波長の電磁波を利用した宇宙観測ができるようになりました。

しかもこれは、たんなる手始めにすぎません。私たちは、宇宙をさまざまな方法で観測し、その根本的な性質に迫る可能性を垣間見たところなのです。