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女で、子供いて、出世するのは無理だと気づくのに10年かかった

新連載・A子ちゃんとB美ちゃんの複雑な感情

元日本経済新聞記者にして元AV女優の作家・鈴木涼美さんの新連載。現代社会を生きる女性たちのありとあらゆる対立構造を、「Aサイド」「Bサイド」の前後編で浮き彫りにしていきます。第1試合は「ママ」対決! Aサイドではキャリア系ママの複雑な感情を紐解いていきます。

橋本マナミを少しあどけなくした感じ

「定まってないんだよね、最近」

彼女は銀座の中華料理屋の辛いスープを一口だけ飲んでそう言った。私と待ち合わせをする前にロンハーマンで買い物をしていたらしく、結構大きめの紙袋を隣の椅子に乗せている。

おそらく今着ているワンピもロンハーマンの今季のもので、靴はセルジオ・ロッシ、バッグのブランドはわからなかったが、バーニーズやエストネーションで気に入って購入したであろう質の良いものであることはわかった。

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「メディア立ち上げの案件で、後輩が持ってきた企画もそんなに悪くはなかったんだけど、PRの案がクソで。私がキャスティングし直したらそれが気に入らなかったのか、それから急速にやる気なくしちゃったみたいで、結局私の作業が増えて。別に後輩の企画がクソでも、立ち上げがうまくいかなくてもいいんだけど」

服装が上品になったところで、口の悪さは高校時代から変わっていない。というか学生時代よりさらに口が悪くなったような気もする。

高校時代はそこそこギャルっぽかったが、大学時代の彼女は私の知り合いの中で一番男性ウケが良かった。スニーカーか、趣味の良い高すぎないヒール靴を履いていて、髪はセミロングで色白、顔は橋本マナミを少しあどけなくした感じ。さらに面倒見がいい割に舌足らずな喋り方をした。

『CanCam』を読んでいそうで読んでいない、実は結構難しい本も読むし、ひとり旅にも行く、そういうタイプだった。多くの大学の同級生たちが玉砕するのを尻目に、ヒスパニック系外国人やアル中の弁護士など個性豊かな男と付き合っていた。

 

「うちみたいな大きい会社もそろそろ本気でワークライフバランスとか子供いる女の出世とかやらなきゃいけないっていう気持ちだけはあるじゃん。

今の女の部長って2人だけで、片方は多分生まれてこのかた化粧したこともない、独身の、なんか筋肉質な人でさ、迫力はあるけど、誰もこうなりたいとは思えない上に、3ヶ国語ぺらぺらでハーバードかなんかのビジネススクールも出て毎日FTとかWSJ含めて5紙以上新聞読んでて、なんか現実的じゃないでしょ。というか子供いたら無理でしょ。

もう片方は死ぬほど美人でこっちも子なしバツイチ独身。それで私の世代に、もうちょっと現実的で子供のいる出世ロールモデルを作りたがってんの」