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政府のエネルギー計画「なし崩し原発再稼働」に未来はない

新設の可否を真正面から議論せよ

原発推進なのか、脱原発なのか

政府の「エネルギー基本計画」の見直しが始まった。基本計画は国の中長期のエネルギー政策の指針で、現在の第4次基本計画は2014年4月に閣議決定された。

法令でおおむね3年ごとの見直しを求めており、2003年10月の1次基本計画以来、2007年3月の第2次基本計画、2010年6月の第3次基本計画と見直されてきた。

基本計画の見直しは、経済産業相の諮問機関である総合資源エネルギー調査会基本政策分科会(分科会長・坂根正弘コマツ相談役)で議論が始まった。来年3月末までに第5次基本計画の原案を固め、4月にも閣議決定する。

焦点は原子力発電の取り扱いだ。

 

現行の第4次計画の策定に当たっても、調整が難航した。第4次計画では原発を安定的な「ベースロード電源」と位置付けたものの、原発依存度は「可能な限り低減させる」とも明記されている。

福島第一原子力発電所事故によって「脱原発」を主張する声が強まり、それまでの原発推進を声高に主張できなくなったためだ。

2012年には民主党の野田佳彦内閣が「2030年代に原発稼働ゼロを可能とするよう、あらゆる政策資源を投入する」方針を打ち出していた。

第4次計画では、この民主党方針を「撤回」したものの、素案段階では「エネルギー需給構造の安定性を支える基盤となる重要なベース電源」と書かれていたものを、「ベースロード電源」という言葉に置き換えざるを得なくなった。

「ベースロード電源」とする一方で、「可能な限り低減させる」という、原発推進なのか、脱原発なのか、分からない矛盾を内包した基本計画になった。

その第4次計画を受けて政府が策定した「長期エネルギー需給見通し」では、2030年度の原発依存度を「20~22%程度」にするとした。既存の原発は稼働から40年でその期限を迎えるのが原則で、その後は基本的に廃炉することになっている。

法律では20年間に限って1回だけ延長することもできるが、そのためには安全性が確認され、原子力規制委員会の許可を得なければならない。

エネルギーの需要量、つまり分母がどれぐらいになるかにもよるが、「20~22%」とした場合、原発の「新設」や「リプレース(建て替え)」がなければ、達成は難しい。既存原発の再稼働だけでは「せいぜい15%」という声もあったが、新設やリプレースには一切触れずに、20~22%という数字だけを出した。ここにも矛盾を内包したのである。

原発問題専門の懇談会設立

次の第5次基本計画の焦点は、これらの「矛盾」をどうするかが焦点だ。原発の新設、リプレースを明確に打ち出すのか、それとも既存の原発の期限到来と共に日本は「脱原発」の道を歩むのか。

第4次基本計画で「矛盾」に満ちた方針を打ち出さざるを得なかったのは基本政策分科会のメンバーが多岐にわたっていたためだ。その構図は今も変わっていない。

もちろん経産省が選ぶ委員だから「脱原発派」は少数だが、それでも意見は反映させざるをえなくなる。今回の分科会をみても、分科会長以下18人も委員がいる。期限が区切られている中で、原発をどうするか、というそもそも論を議論する体制にはないわけだ。

そこで今回、経産省が考え出したのが、「エネルギー情勢懇談会」の創設。分科会からは坂根分科会長だけが加わり、総勢8人のメンバーでエネルギーの将来像について議論する新組織を立ち上げた。

メンバーには五神真・東大総長のほか、中西宏明・日立製作所会長、飯島彰己・三井物産会長、船橋洋一・アジアパシフィックイニシアティブ理事長、宇宙飛行士の山崎直子氏らが加わった。8月30日に初会合を開く。