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トリプル補選で惨敗なら、安倍首相「電撃辞任」の可能性

運命の日は10月22日

この局面では、解散を打って求心力を高めるのが政界の常識だった。だが、解散できない事情があるのだとしたら?いま安倍晋三は、何が正解かを考え続けている。タイムリミットは間もなくだ。

側近・今井尚哉の爆弾発言

「このままいけば、安倍政権は来年の9月で終わりだと思う。次は石破が90%、岸田が10%だろう」

首相秘書官の今井尚哉がこう語ったとき、記者たちは息を飲んだ。オフレコ懇談とはいえ、安倍の忠臣が堂々と「政権の終わり」を見据えた瞬間だ。

今井の発言の前日。安倍にとって「最後の晩餐」ともいえる会合が開かれた。8月15日、山梨県鳴沢村の笹川陽平(日本財団会長)別荘。安倍を囲んだのは森・小泉・麻生という総理経験者たちだ。

出張職人の寿司をつまみながら、酔った小泉純一郎は安倍に語りかけた。

「昨日の友は今日の敵。昨日の敵は今日の友」

森喜朗も続けた。

「('80年の)大平さんの不信任案のときは、角さんが3階の部屋にいるとわかってなあ、これで『解散だ』って読んだんだよ」

「加藤の乱」など政局を揺るがした事件の昔話が続いた。彼らは安倍を励ますつもりだったのかもしれない。だが、作り笑いをしていた安倍の目は笑っていなかった。赤ワインも進まない。安倍の視線は、同席していたもう一人の総理経験者・麻生太郎に向けられていた。

「先輩面していい気なもんだ。俺に嫌味を言っているのか。それより麻生さん、俺はいったいどうしたらいいんだ?」

麻生は視線を逸らせた。

内閣・党改造で、支持率は4割台まで回復したが、改造効果もここまで。安倍周辺が蠢き出した。

「当然、我が党としては3つの補欠選挙をみんな勝利を得るべく全力を尽くしたいと思っております」(幹事長の二階俊博)

「3つ勝つという心意気で臨んでいかなければならない」(総務会長の竹下亘)

10月22日に控える衆議院議員トリプル補選に関して、この2人の発言を額面通りに受け取ってはいけない。自民党の閣僚経験者が解説する。

「トリプル補選で3勝は絶対に不可能というのは既定路線だ。わざわざハードルを上げてみせて、安倍を牽制したんだよ」

今回補選が行われるのは青森4区、愛媛3区、新潟5区。自民党がまず確実に負けると言われているのが愛媛3区だ。

「加計問題の舞台・今治市に隣接しており、加計問題が争点になりやすい『危ない』選挙区です。自民党候補・白石寛樹は父親の故・白石徹議員が麻生派だったことから、麻生が強引に公認に推した。

女性スキャンダルが週刊新潮に報じられたことで、『候補者を差し替えなければ』との声が出はじめているものの、麻生も簡単には引き下がらないでしょう。ここでの1敗は覚悟しています」(自民党関係者)

 

「懲りない男だ」

青森、新潟も決して盤石とはいえない。

「仙台市長選(7月23日)での敗北のように、共産党も含めた野党共闘で一気に攻め込まれる危険がある。

新潟は泉田(裕彦)前県知事を擁立できれば勝てると踏んでいるが、まだ候補者の調整がつかないし、青森にしても出馬するのは故・木村太郎議員の弟、次郎氏。弟となると弔い合戦としては難しい」(同)

3勝どころか、情勢次第では3敗もあり得るというのだ。そうなれば凄まじい「安倍おろし」は避けられない。だから安倍は腹を決めている。

「万が一3敗するような事態になれば、そのときは総理をやめるよ。だからこそ、自民党の力すべてを傾注してほしい」

安倍の表情は、悲壮感に満ちていたという。