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ご存知ですか?「キャンサーナビゲーション」が寿命を延ばす

アメリカでは常識

治療を医者まかせにしない

「米国では、病気を最初に診てもらうのは自分の『かかりつけ医』です。彼らは医療のコンサルタントの役割を果たし、様々な治療法をコストも含めて公正に解説してくれます。

日本の場合だと、最初にかかった医師が外科医であれば『どう手術するか』が優先され、他の治療法が勧められる可能性は少ない」

こう語るのは、米国のがん治療の権威であるミネソタ州のメイヨー・クリニックに勤務経験のある森山紀之医師だ。

 

このように患者の意思を尊重する意識が強いアメリカでは「キャンサーナビゲーション」とよばれる制度が導入されている。プログラムを修了した専門家が、患者の診断時から緩和ケアまでを客観的な立場からサポートする制度である。

国際医療経済学者のアキよしかわ氏はキャンサーナビゲーションの重要性を次のように語る。

「医師の一存で治療法が決まったり、エビデンスが不確かな民間療法に惑わされて治療法を替えてしまうと患者に不都合なことが起こりやすい。

だから専門の知識を持ち、かつ直接治療は担当しない『キャンサーナビゲーター』が客観的に適切な治療法を、患者と一緒に考える必要があるのです」

治療予約のアポイントから患者の不安を取り除くセラピーの紹介、そして経済的コストの管理まで、様々な支援を行うのがキャンサーナビゲーターの役割である。ちなみにナビゲーターは必ずしも医師とは限らない。

「こうした制度があるからこそ、セカンドオピニオンやインフォームド・コンセントも有機的に活用されている。これらの制度は日本にも導入されていますが、依然として最初にどの医師に診てもらうかで治療法がほぼ決まってしまうのが現状です」(医療ジャーナリスト)

がん治療の本当の闘いは、手術や抗がん剤治療を終えてからである。「がんサバイバー」たちは、2~3ヵ月おきの検診を受けつつ、転移や再発の恐怖と闘う日々を迎える。

再発することなく人生を全うする「がんサバイバー」もいるが、再発して末期状態になった場合、「苦しまない最期」を考えなければいけない時もやってくるだろう。

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「日本では『緩和ケア』と聞くと、すぐにホスピスのような終末医療を想像しますが、アメリカでは少し考え方が違います。

術後の痛みを抑える薬から抗がん剤治療の方法まで、すべてのがん治療にかかる負担をどう緩和していくかを患者に寄り添って考えるのがキャンサーナビゲーションなのです。

そういった長い付き合いがあるからこそ、『どのように最期を迎えるか』という難しい相談も親身にできる。日本では病院のベッドで亡くなる人が80%近くにのぼりますが、米国では半分以下です。

在宅で緩和ケアを受けられる環境が整っていないのは、いまだに日本の医療現場で『手術でがんを取れば治療は終わり』と考えている節がある証拠ではないでしょうか」(前出・アキ氏)

患者が自分の治療を選択できる自由、そしてそれをサポートする体制に、日米最大の「がん格差」があるのだ。

「週刊現代」2017年9月2日号より