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なんとアメリカの2倍!なぜ日本のがん患者は入院が長いのか

日米「がん格差」はこんなところにも

長期入院で儲ける病院

医療における日米の差は、入院日数にも表れている。

日本のがん拠点病院によって構成されたCQI研究会のデータによると、たとえば米国で大腸がんの腹腔鏡手術を受けた場合、患者は術後5日程度で退院するのがふつうだ。

一方日本では、入院日数は平均15.2日、術後退院までに10日程度かかり、米国の2倍以上の日数を要する。そのうえ各病院の入院日数にはバラつきが大きく、なかには1ヵ月以上入院する患者もいる。

これらの差が生まれる原因は何なのか。

日米の入院日数の違いが生じる理由について、元国立がん研究センターがん予防・検診研究センター長の森山紀之氏は次のように語る。

「第一に、保険制度の違いがあります。米国は入院費も自由診療で、相部屋だったとしても1泊10万円近くかかってしまうのです。だからアメリカの病院の前にはだいたい1泊3000円程度の安ホテルがあって、そこから点滴をぶら下げて通院する病み上がりの患者もいるほどです」

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日本では、民間の医療保険に複数加入していれば非常に軽い医療費の負担で済む。だがアメリカでは、民間の医療保険料は安くても月10万円を下らないので、保険に加入すること自体ハードルが高い。

日米の医療費には圧倒的な差があり、米国の患者からしたら一刻も早く退院したいと思うのが当然だ。その一方で病院側としても、入院日数を簡単に増減させられない事情がある。これは日米共通で言えることだ。

医療経済ジャーナリストの室井一辰氏は語る。

「日米の病院では、診療報酬の支払い制度に違いがあります。アメリカは『入院一回あたり』で病院に報酬が入るため、入院期間が必要以上に長くなるとそれだけコストがかかり、病院は収益を上げられなくなってしまう。

一方、日本の診療報酬は『一日当たり』の出来高払いです。そのため、入院が長期なほど報酬が増えるので、患者が長く入院していても病院は損をしません。

現在、厚生労働省はこの出来高払いをやめ、入院一回あたりで診療報酬を決める制度の導入を検討していますが、なかなか進まないのが現状です」

日本医科大学武蔵小杉病院腫瘍内科教授の勝俣範之氏も日本の病院の課題について語る。

「日本は戦後復興期に病院を造りすぎたため、都内のトップドクターが集まるような病院でない限りベッドが余っています。病院からすれば患者が入院しないと儲からないので、ベッドに余裕があるうちは患者を長く病院にとどめがちになるのです」

 

また、日本の病院で入院日数にバラつきがあるのには、次のような事情もある。

「アメリカでは、病院は『医療を受ける場所』という位置づけが明確にあり、手術なら手術、投薬なら投薬が終わればとりあえず退院するのが当たり前と考えています。

そのこともあり、学会が定めるガイドラインで『医学的に必要最低限の入院期間』が疾病ごとに細かく定められていて、各病院はそれを遵守するようになっている。

日本では米国のように『入院一回あたり』という診療報酬もなく、細かな治療ガイドラインも設けられていないので、病院によっては1ヵ月以上入院する患者も出てくるのです」(国際医療経済学者のアキよしかわ氏)