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野球 週刊現代

東北楽天監督・梨田昌孝の「弱くても勝つ」技術

名将が流儀を語る

年俸総額は、ソフトバンクのわずか2分の1。それでも、楽天は優勝に向けてひた走る。「今ある戦力で最高の結果を出す」――。率いる球団を必ずリーグ優勝に導いてきた名将がその流儀を語る。

想定外の開幕戦

熟思黙想の一手だった。2番カルロス・ペゲーロ。外国人の強打者を2番に置くのは、この国の野球においては〝非伝統的な手法〟である。

3番ゼラス・ウィーラー、4番ジャフェット・アマダー。ズラリと並ぶカタカナ名。開幕カードのオーダーだ。開き直ったのではない。指揮官は腹をくくったのだ。

「僕の理想の2番はつなぎ役。犠牲バントができる。エンドランもこなせる。でも想定外のことが多発して、理想を言ってられなくなったんです」

東北楽天を率いて2年目の梨田昌孝。インタビューの前日、64歳になった。NPB現役最年長監督は、柔和な面持ちそのままのソフトな口ぶりで話し始めた。

「まず開幕に予定していた(埼玉西武からFA移籍でやってきた)岸孝之がインフルエンザにかかり投げられなくなった。2戦目に予定していた安樂智大はハムストリングを故障。

しかも、相手(オリックス)の開幕投手は最多勝に2回輝いている金子千尋。こっちの開幕投手は3戦目を予定していた美馬学。2戦目が辛島航、3戦目が古川侑利。顔ぶれを見てください。〝こりゃ点取らないと勝てない〟となるでしょう」

攻撃は最大の防御。やるからには徹底する。驚くことにセカンドにはファーストが本職で、昨季は1試合もそのポジションを守っていない銀次を起用したのだ。

「セカンドの藤田一也も右足を負傷していましたからね。一応、オプションとしてキャンプ、オープン戦で〝セカンド銀次〟を試してはいたんです。それで開幕戦前に、〝銀ちゃん、いかなくちゃいけないよ〟と(笑)。今いる限られた選手で結果を出す。それが監督の仕事ですから」

 

この超攻撃的布陣は成功した。敵地・京セラドームでの開幕戦。延長戦にケリをつけたのはペゲーロのバックスクリーン上段への特大ホームランだった。

2戦目は外国人トリオの7度の出塁を5番の銀次以下が返し、13対4で圧勝した。

3戦目はゲームセットまで、あとアウトひとつと追い込まれながら2番ペゲーロが起死回生の逆転2ランをバックスクリーン上段に叩き込んだ。

開幕カードでオリックスを3タテし、勢いに乗った楽天は3、4月を16勝5敗と突っ走った。

その後も好調を維持し、8月15日現在、僅かな勝率差で首位に立つ福岡ソフトバンクを猛追、激しい優勝争いを展開している。

競馬で言えば、ここからが勝負どころの第3コーナー。ソフトバンクという二重丸の本命馬を向こうに回し、鮮やかな手綱捌きでダークホース楽天を駆る梨田に対する興味がいや増す。